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第9回 字幕翻訳者は語る!


前回、機内映画について書きましたが、
チャンネルを変えても変えても登場する
中国語の字幕を見て、ふと思ったことがあります。

普段、洋画を見る際に付いている日本語字幕、
あれは当然ではなく、特別なことなんだ、と。


すると、


「字幕って、どんな風に作られるんだろうか?」

「翻訳者は、一体どんなことを考えているのだろうか?」


などなど、次々と疑問が湧いてきました。


かくなる上は、ぜひともプロの声を聞いてみたくなるのが
人情というものですよね!


そこで、今回は、特別インタビュー

「字幕翻訳者は語る!」

をお届けします〜


ご登場いただくのは、
字幕&吹替翻訳家として大活躍中の
中沢志乃さんです。



←中沢さん


では、さっそくいってみましょう!!

(インタビュアー:団長)


—まずは自己紹介をお願いします。

中沢さん(以下N):
読者の皆さん、はじめまして。
中沢志乃と申します。
字幕の仕事を中心に、通訳などもやっています。
よろしくお願いします。


—中沢さんは帰国子女ということですが、
  簡単に経歴を教えてください。


N:
はい。生まれはスイスで、
高校までは主に海外で生活していました。

学校では英語、家に帰れば日本語、という
いわゆるバイリンガルとして育ちました。

高校3年の時にアメリカより帰国して、上智大学に入学。
将来は、英語を使って、外交官や映画関係のインテリア、
美術などの仕事をしたいと思っていたんですが…

卒業後は日弁連に就職しました(笑)


—日弁連? それは意外な展開ですね(笑)

N:
そうなんですよ。
でも、就職して半年で人生が見えてしまった気がして、
元々興味のあった字幕翻訳の学校に通い始めました。

学校に1年半通った後に、日弁連を退職して、
字幕や吹替の制作会社であるACクリエイトに入社しました。


—晴れて、やりたい仕事をできるようになったわけですね。

N:
はい。翻訳者を育てようという意志の強い会社で
とてもやりがいがありました。
そして、30歳で独立しました。


—え、それはどんなキッカケで?

N:
入社した時から30歳で独立、
という計画を立てていましたので

“あ、30歳になったから独立しよう!”

という感じでアッサリと(笑)


—ハハハ、めっちゃユニークですね!

N:
私としては予定通りに行動しただけなんですけど
周囲には驚かれましたね(笑)


—では、字幕の仕事について伺います。
  1作品に、どのくらいの時間をかけるんでしょうか?


N:
字幕の仕事は制作期間が短いんですよ。
だいたい1週間くらいですね。


—1週間!? それは相当な重労働ですね。

N:
まさしく短期集中ですよ。
仕事中は、完全に、ひきこもり状態になります(笑)

昨年公開された「アニー・リーボヴィッツ」は
しゃべりの場面が多く、映像の進行も早いので
翻訳しがいがありましたね。

それと、今まで写真は普通に撮ればいいと思ってましたが、
アニーを見たこと、翻訳したことで、
“心の内面を撮る”ということを知りました。

1人の人間としても、非常に大きな経験になりました!


—字幕のスキルアップのために
  何かやっていることはありますか?


N:
映画を見るのが一番ですね。
字幕って、翻訳者の性格がすごく出るんですよ〜
少し見れば誰が担当したのか、わかりますから(笑)


—え〜、ホントですか! 
  それはプロならではの楽しみ方ですね(笑)
  では、中沢さんにとっての“いい字幕”とは?


N:
あまりつくりこんだり、考えに考えてつくった字幕って、
ピンとこないんですよ。
見ててわかりますし。

字幕なんだけど、しゃべってるように感じるものが
いい字幕だと思います。


—字幕翻訳する際に心がけていることは?

N:
話者になりきる、セリフに反応して流れるように
言葉が出てくる時に、いい翻訳ができますね。

映像と言葉でイメージがパッと出てくる。

短い言葉ではあるけれど、バッサリ切るのではなく、
全体を網羅するような言葉を紡ぎ出したいですね。


—最後に、字幕の仕事の魅力を教えてください。

N:
字幕翻訳の仕事を志す人はけっこういるんですけど、
挫折する人も多いんですよ。
大変な割りに、お金がいいわけでもないですし。

でも、私は、日本と欧米の文化の架け橋という意識で
楽しんで仕事をしています。

映画というのはエンターテイメントですけれど、
社会的意義も大いに感じています。

日本と欧米の両方の心がわかる翻訳者として
いい作品にたくさん巡り会い、それを
皆さんに届けていきたいです。


—お忙しいところ、どうもありがとうございました。
  ますますのご活躍、楽しみにしています!



●中沢志乃(字幕/吹替翻訳家)
劇場公開作品、DVD作品、CS放送、ローカライズ版ゲームなどで字幕、吹替翻訳を手がける。主な作品は、「アニー・リーボヴィッツ」「ファイアー・ドッグ」「ビューティー・ショップ」「すべてはその朝始まった」「ブラッド・パラダイス」「ゴースト・ライト」(以上、字幕)アニメ「X-MEN」(吹替)、「アンチャーテッド」(PS3吹替)など。



2009.2.6 掲載

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