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2002年12月5日発行(毎週木曜日配信)
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          女性国会議員メルマガ『ヴィーナスはぁと』第55号

  ***   ***   最近の政局を見ていると、「いったい何やってんの!」と
 *****v***** 腹立たしくなることもしばしば。そんななかで、ヴィーナス
  *********  議員の原稿が届くと、「ああ、そうだ。目立たないけど、
   *******   信念を持って政策に取り組んでいる政治家もいるんだった」
     ***    と、ちょっと安心します。今回は瀬古議員と、川田議員が登場。
      *     一般の報道ではあまり出てこない問題点を指摘してくれました。

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  目次
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■ 「人間性回復」裁判 ここでも
   瀬古由起子(衆議院議員・共産党・東海)

■ 「司法制度改革について」    川田悦子(衆議院議員・無所属・東京)

■ 編集後記

■ 「ヴィーナスはぁと」参加議員一覧

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 「人間性回復」裁判 ここでも
             瀬古由起子(衆議院議員・日本共産党・東海)
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 NHKのドラマ「大地の子」に涙を流された方も多いと思います。

 戦後中国に置き去りにされた「孤児」たち、約630名が日本政府に対し裁判
を起こすことになりました。「人間性回復」の裁判だと言うのです。

 「孤児」たちは今まで日本政府に3度も棄てられたと言います。一度目は、
敗戦当時、日本の軍隊が国民を置き去りにし、政府が旧満州からの引き上げ
に冷淡な態度をとったことから、引き上げの大混乱の中、親と引き離された
「孤児」が生まれました。

 「孤児」たちは、貧しい中、養父母の献身的な努力によって育てられまし
たが、日本軍の行なった残虐行為への怒りから「小日本鬼子」としていじめ
られたり、「文化大革命」時に日本人という理由で差別や迫害を受けて悲惨
な経験をした「孤児」たちも少なくありません。しかし日本政府はその「孤
児」たちを探す努力もせず、戦時死亡宣告制度をつくり、残留「孤児」を死
亡扱いにしてしまったのです。これが「孤児」への2回目の「棄民」です。

 1972年、日中国交回復がされても「死亡した孤児」たちへの調査や対応が
行なわれたのは、それから10年後です。望郷の念断ちがたくやっとの思いで
帰ってきた「孤児」を待っていたのは、日本政府の冷たい態度でした。

 あまりにも長く放置されていたため、肉親が見つからない「孤児」も多く、
国籍取得は「死亡」しているために裁判からはじめなければなりませんでし
た。そして夢にまでみた「祖国」では、日本語も話せず、自立支援の施策も
ほとんどなく、「孤児」の7割は生活保護に頼らざるを得ないという状況で
す。生活保護を受けると中国の養父母に会いに行くことも許されません。こ
こでも「孤児」たちは「棄てられて」いるのです。

 「普通の日本人として誇りをもって生きたい」「安心して老後を送れるよ
うにしてほしい」と彼らは言います。

 何よりも「日本政府の真摯な謝罪がほしい」と言うのです。ハンセン裁判
の「人間性回復」のたたかいに励まされ、「北朝鮮拉致被害者救済の国民世
論」に確信をもったと「孤児」たちは裁判を決意したのです。

 私は、この夏、個人的に訪中して、残留「孤児」の方に出会い、その実態
を聞き、ショックを受け、また立法府の一員として本当に申しわけない思い
をしました。昨年は韓国で元「従軍慰安婦」と言われている方々や日本が強
制隔離した韓国人ハンセン病元患者、韓国人被爆者、強制連行、強制労働で
働かされた方々にもお会いしました。日本政府が謝罪し、償わなければなら
ない人々が何と多いことか!

 「真摯な謝罪」と「人間性回復」を求めて裁判を起こさなければならない、
いや起こせない人々を含めて日本政府に迫りたい。


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 「司法制度改革について」
                 川田悦子(衆議院議員・無所属・東京)
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●司法制度改革と私たちの生活

 「裁判」なんて自分に関係ないから、司法制度改革など自分に無関係であ
ると思っている方が多いと思います。でも「裁判」が自分に関係はないとい
うのは間違っています。現に普通の主婦であった私が、国・厚生省を訴える
裁判(国賠訴訟)をおこなう薬害被害者の家族になってしまったのです。

 いま、政府は、司法を市民の期待に応えることのできる制度にしていこう
と内閣に推進本部を設置して、たいへんな勢いで準備しています。

 開かれた制度になり、国際化社会にも対応できる抜本的な改革は必要であ
ると、多くの関係者は総論で賛成しています。でも果たしてその中身は大丈
夫でしょうか。私たちは騙されないようしっかり見ていかなくてはならない
と思います。

 政府が打ち出してきた医療制度改革の場合は、この改革は、政府がやるべ
き社会保障政策を後退させ、患者や医療関係者に負担だけを押し付け、医療
福祉の分野に株式会社を導入していき、やがては巨大な医薬品・医療器具メー
カーだけが儲かっていく仕組みであることが明らかになりました。そこで強
い反対の声があがりましたが、結局与党は、前国会で第一弾として「健康保
険制度の改悪」を成立させてしまったのです。そのことは読者のみなさんも
ご存知の通りです。

 政府が推進している規制緩和策の医療制度改革は、「患者の命を守る」の
ではなく、「患者から金をまき上げる」仕組みです。そしてその改革は、今
後第二弾、第三弾と出てくることになっています。

 では、司法制度改革はどうなのでしょうか。多くの司法関係者は、自分た
ちの利権が確保される制度に概ねなっているし、総論で改革になっており、
何でも反対というのでなく、その中に入っていって少しでも良くしていこう
と考えています。

 でも司法制度改革は規制緩和政策の最後の仕上げであると見たほうがいい
というのが私の意見です。そして、私と同様に司法制度改革に反対している
法律家がいます。しかし、残念ながら少数なのです。

●裁判ができなくなる「仲裁法」

 今回は、民事司法制度改革の中の一つである「裁判外の紛争解決手段の拡
充・活性化」でいわれている「仲裁法」の危険性について書きます。これは
皆さんに大いに関係することですので、ぜひ一緒に考えて下さい。

 まず、裁判外での紛争解決手段ADR(Alternative Dispute Resolution)
は、今回の司法制度改革で初めて打ち出されたことではなく、すでに個別労
働紛争に対してもADRで解決する方向を厚労省は打ち出してきており、私はそ
の時も反対しました。

 そもそも、ADRの一つである「仲裁法」は、専門性の高い事案などでは適切
に対応できるというメリットがあります。また、国際的な取引きの紛争は国
によって裁判制度が違うことから、裁判になると時間がかかるのでADRの仲裁
法が検討されてきました。ところが、ここへきて国内の取引きにまで範囲を
広げようという動きになってきたのです。消費者や労働者の契約まで含めて
いこうというのです。これはたいへん危険です。

 仲裁とは、紛争当事者の合意により仲裁機関(仲裁人)を定めて、その仲
裁機関の判断に紛争解決を委ねる手続きです。仲裁契約をすると、紛争は仲
裁機関によって解決されます。その仲裁機関も契約によって指定されます。

 契約する場合、当事者同士が対等で、専門的知識があれば問題はあまり起
きません。しかし、契約の一方が「強い者」の場合はどうでしょうか。「強
い」というのは、法律に精通しているかどうかということや、社会的な立場
も関係してきます。

 たとえば、労働者と会社とが労働契約する場合、労働者が仲裁機関の設置
や指定をすることはできません。会社が用意した契約書や就業規則などの中
に仲裁機関がすでに書かれているのが普通です。また、仲裁人は弁護士でな
くてもいいので、会社にとって都合のいい人を仲裁人に指定してくることが
予想されます。ところが、そこで仲裁契約に労働者が異論を唱えれば、契約
不成立ということで採用されなくなります。

 また、消費者と事業者が契約する場合、消費者は仲裁契約が入っているこ
とを知らずに契約することが当然おきます。(非常にこまかい字で書かれた
契約書の片隅に仲裁という言葉が書かれている場合があるかもしれません)。
注意深い人で、法律に精通し、相手に契約の是正を迫ることができる人でな
い限り、ほとんど人は仲裁契約をさせられてしまうことになるでしょう。

 ところが、仲裁契約は締結されてしまうと、裁判に訴えることはできない
のです。つまり、裁判外での紛争処理をする選択をした(仲裁契約)ので、
裁判はできないということになるのです。つまり仲裁法は裁判の権利を放棄
する仕組みなのです。

 裁判を受ける権利は憲法32条で保障されています。この重要な権利をいと
も簡単に放棄させてしまう法律は、十分に検討され、議論すべきです。

●裁判のもっている深い意味

 そもそも仲裁は、既に判例などがある場合は力を発揮するシステムです。
しかし、これまでなかった問題や特殊な事案などでは、紛争の実効的な解決
は期待できません。それは先ほど述べましたように、弁護士でない人も仲裁
人になることが可能であり、偏った人選の結果、仲裁人の恣意的な判断が押
し付けられることがでてくるからです。

 一方、裁判は実際の紛争を解決するという面だけでなく、従前の判例を変
更させて、権利拡大を図るということも果たしてきたのです。この面を評価
することは重要です。消費者問題、労働問題、医療過誤問題、環境問題など
の裁判では、裁判所の新しい解釈・判断によって権利が拡充されてきた実績
があるのです。

 例えば、1991年バブル崩壊とともに顕在化した証券被害の場合、各地で被
害者が訴訟を提起し、結果、証券会社が一般投資家に金融商品について説明
すべきであるという『説明義務』が確立しました。これは今日では判例上、
自明の法理として定着したもので、それは変額保険についても同様です。

 また、労働裁判についても『整理解雇の4要件』や『労働条件の不利益変更
の禁止』なども裁判を通じて確立してきたのです。

 ところが、仲裁法が消費者や労働者にも適用されてしまうと、裁判所に訴
えを提起することすらできなくなり、被害は顕在化することもなく、闇に葬
り去られることになります。

●弱者を守る司法に

 このように、仲裁法を国内の契約にまで適用すれば、弊害が大きいことは
はっきりしています。推進する側は、「司法の中核たる裁判機能の充実に格
別の努力を傾注すべきことに加えて、ADRが国民にとって裁判と並ぶ魅力的な
選択肢となるよう、その拡充、活性化を図るべきである」として仲裁法制定
を検討していますが、仲裁法は、仲裁以外の方法で解決する道を塞いでしま
うのであって、魅力的な選択肢が増えることではないのです。

 司法制度改革は、国民の司法へのアクセスを容易にするということも理念
の一つとしていますが、仲裁法はこの理念からも外れています。

 司法制度改革推進にあたっての政府の基本的な考え方は、目的のところの
冒頭一文に如実に示されています。

 「社会の複雑・多様化、国際化がより一層進展する中で、行政改革を始め
とする社会経済の構造改革を進め、明確なルールと自己責任原則に貫かれた
事後監視・救済社会への転換を図り、自由かつ公正な社会を実現していくた
めにはその基盤となる司法の基本的制度が新しい時代に相応しい……」

 「自己責任原則に貫かれた事後監視・救済社会への転換」とは、つまると
ころ「知的レベルが高く、情報を持っている者は報われるという弱肉強食の
社会に転換していく」ということです。しかし、自己責任原則をいうなら、
その前提に情報の共有化は絶対条件です。今回、仲裁契約というものがどう
いうものなのか、仲裁法では裁判の権利がなくなるということも知らせずに
仲裁法を成立させるのは「騙し」というものです。

 司法制度改革によって、司法がますます市民から遠くなって、裁判の権利
が奪われていくなら、それはまちがった改革です。今回の改革は「敗訴者負
担制度」の導入など、お金がなければ裁判ができなくなるという、弱者が裁
判に訴えられない仕組みが提案されています。本来、司法は弱者を守るもの
です。

 学ぶ意欲を失わせ、競争をあおる教育を一方では推進していながら、「自
己責任原則」を振りかざし、弱者を守ろうとしない改革はニセ改革です。知
識や情報を持っている一部の人々がますます富んでいき、そうでない人はま
すます貧困になっていくことを法が推進する社会は異常な社会です。これで
は潤いのない冷酷で殺伐な社会になっていくだけです。

 私たちは子どもたちにそんな社会を渡すことはできません。誰のための司
法制度改革なのかしっかり見極め、声をあげていきましょう。


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  編集後記              ロゼッタストーン・弘中百合子
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 ヴィーナス議員には、弱者の視点に立って活動している人が多いようです。
お金や権力がない人、体が丈夫でない人、少数派に属する人、あまり知識を
持っていない人…にとって住みやすい世の中なら、誰にとっても住みやすい
んじゃないかなあ、と思います。

 ご意見、ご質問はvheart@rosetta.jpまでお願いします。

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  「ヴィーナスはぁと」参加議員一覧
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
「ヴィーナスはぁと」に参加してくださったのは、次の15名(敬称略)の
方々です。

 ◇衆議院
  川田悦子 (無所属・東京)  瀬古由起子(共産党・東海)
  武山百合子(自由党・北関東)  水島広子 (民主党・栃木)
  山内惠子 (社民党・北海道)  山口わか子(社民党・北陸信越)

 ◇参議院
  有村治子 (自民党・比例)  井上美代 (共産党・東京)
  岡崎トミ子(民主党・宮城)  小宮山洋子(民主党・比例)
  千葉景子 (民主党・神奈川)  八田ひろ子(共産党・愛知)
  広中和歌子(民主党・千葉)  福島瑞穂 (社民党・比例)
  吉川春子 (共産党・比例)

詳しいプロフィールを知りたい方、顔写真を見たい方は、ロゼッタストーン
WEBページで公開しています。⇒ http://www.rosetta.jp/
各議員のWebページにもリンクしています。

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■次号予告
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 次回は、井上美代議員(共産党) 山口わか子議員(社民党)、
 岡崎トミ子議員(民主党)が登場します。

 ※登場する議員の顔ぶれは、変更する場合もあります。ご了承ください。

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発行人・編集人:弘中百合子
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