本間 |
「見方を変えるとね、あの1年があったから、いまのわたしがあるのよねフッフッフ、という10年後がくるかも!」 |
田中 |
「10年後……来年のこともあまり考えていなかったので」 |
本間 |
「ここだけ見てると大変な一年じゃないですか。すると悲劇のヒロインになっちゃうんだけど、見方を変えると、これひょっとするとサクセスストーリーの序章かもしれないでしょう。いろんなことを清算する時期が集中的にあったんですね。日本経済もバブルの清算をしないからなかなか元気が出ない。どっかで清算を思い切ってすれば、そっから先はよくなるしかないんだもん」 |
田中 |
「ハードランディングしたってことでしょうか」 |
本間 |
「そうです! だからクリーンスタートが切れる」 |
田中 |
「ちょっと翼とか折れちゃったけど、また直せばいいってことでしょうか」 |
本間 |
「ううん。翼はまた生えてくるから。骨折しても、骨折した跡の骨の方が丈夫になるんですよ。本当に。」 |
田中 |
「でも、34歳でだいぶ遅いスタートで……」 |
本間 |
「ときどきね、そうやってまた消極的に考えちゃうときがあります。そんなときはどう考えたらいいと思います? “かわいいわたし!”って思うんですよ」 |
田中 |
「“かわいいわたし”ですか!?」 |
本間 |
「そう、またこんな見方してる。“かわいいわたし”!って。だって、第三者的に見るとね、まだ30代なのに“年を考えたら……”なんて言っている、お友達がいたら、なんだかちょっとかわいく見えない?」 |
田中 |
「そうかもしれません(笑)」 |
本間 |
「もうひとりの自分みたいなものからみて、“あ、かわいいわたし!”って。“いけない考えを持った”ではなくて“かわいいわたし”ですよ」 |
本間 |
「仕事場なんかはどうですか?」 |
田中 |
「それは……就職したほうがきちんと確保できますね。あとフリーだと備品とかも全部、自分持ちになります」 |
本間 |
「フリーだと自宅兼仕事場。あと備品とか。それから作業スペース、環境とかかな。こういう環境だと仕事がしやすいというのはあります? イスとか机とか……フリーの場合に」 |
田中 |
「理想的には、自宅と別で一部屋借りるとかで、自宅とは別にしたいです。現在は生活の場の中にあるので……。作業スペースとしての境界があいまいです」 |
本間 |
「なら、可能性として、模様替えとか、家具の配置の仕方で、今お住まいの物件の中でも、ここは仕事の場、ここは生活の場とアレンジしなおすことはできますか」 |
田中 |
「多少は……できます」 |
本間 |
「あと、就職の短所。これは就職活動しなくちゃなりませんが、かなり時間がかかりますけど、時間はあります?」 |
田中 |
「いまは……あまりないです」 |
本間 |
「就職の長所には、老後、保険とかもあるね。あとは何かあるかな?」 |
田中 |
「フリーは仕事が選べる。会社に入ると、やりたくないこともやらなきゃならないですね」 |
本間 |
「そうね。そりゃあありますよね。(びっしり書き込んだ表を示しながら)さて、メリットデメリット、どっちを取りますかねえ」 |
田中 |
「……やっぱりフリーランスかな。という気がしてきました」 |
本間 |
「僕ね、さっきお話聞いてて、なんかフリーが向いてるような気がしたの。さっきの直球の話とか。なんか変化球投げてコミュニケーションを婉曲にとらなきゃということに気を遣うよりは、わたしはこの仕事という、やりたいことをやっているほうが、直球勝負の人には向いている気がしたんですけどね」 |
田中 |
「ああ、直球がそういうところに、役に立つんですね」 |
本間 |
「これは僕が決めることじゃないんだけどね。やりたいことをバチッと決めると、その仕事は田中さんのところへやってきますよ。あとね、作業環境を変化させるというのは、すごくいい心理的効果があると思います。よく、失恋した人が髪切ったり、部屋の模様替えをするというじゃないですか。あれですよ」 |
田中 |
「ほとんどそういうことをやったことがなかったです。模様替えとか特に……。精神的にいいんですか」 |
本間 |
「空間が変わると、気持ちがずいぶん変わります。部屋ってホント数万円の投資でで、見栄えがコロッと変わります。布をこうかけてみたりとか……。そしてここに入ったら、もう仕事の空間というのを作っちゃう。会社の設備にはかなわないけど、逆にいうとBGMだのアロマだの、個人的な趣味の環境、そういう"わたしの仕事場"というのを作るのは、会社ではできないでしょう」 |
田中 |
「整理が下手と言うか……」 |
本間 |
「あ、またそういう考えになった。“かわいいわたし!”。えっと、“かわいい紀子ちゃん”にしようか。そういうふうに、ちょろっと消極的な言葉を口ばしったときに、“かわいい紀子ちゃん”と自分で言うのがすごくいいですよ」 |
田中 |
「“かわいい紀子ちゃん”ですか(笑)」 |
本間 |
「そう。でね、今ある家具や棚なんかで部屋を仕切ったりすると、比較的仕事場の空間ができそう? それともこういう家具があったほうがやりやすい? というのはある?」 |
田中 |
「今、死んでる棚を生かして何かで仕切って……とすると、2畳くらいは何とかなるかも」 |
本間 |
「なるほど。では色! 何色好き? 今日は黒着てるけど」 |
田中 |
「……赤でしょうか。黄色とか」 |
本間 |
「どっか目に入るところに、好きな色が入るだけで、全然気分が変わりますよ。いま机の周りモノトーンじゃないですか?」 |
田中 |
「そのとおりです。それで少し乱雑で……」 |
本間 |
「少しカラフルにするのどうですか。人間は環境に影響されるから、書類入れるボックスを、ピンクや赤のボックスにするだけでも全然違いますよ。それだけで、仕事の活力が違ってくる。100円ショップなんかもありますから、ミニマムな投資でも結構いけます。いくらくらい予算をかけられる? 部屋の模様替えプロジェクトですよ!」 |
田中 |
「2〜3万ですかねえ」 |
本間 |
「じゃあ2万5000円で、部屋を思い切りカラフルにするプロジェクト! 集中できる空間を作るプロジェクトです」 |
田中 |
「そうか、布かけるだけでもいいんですね」 |
本間 |
「例えば仕事をしているときは、タンスの前に布かけるとか。いまかける布で、イメージわいたのあります?」 |
田中 |
「なんか水玉とか花柄とか、思い切ってポップなヤツを」 |
本間 |
「おー! 布かけて重し置いて、それだけで雰囲気大分変わりますよ。そして予算書と平面図と備品リストの3つを考えるんです」 |
田中 |
「そうやって具体的に考えていけば部屋もきれいになるんですね……」 |
本間 |
「予算2万5000円、間取りを書いた平面図、買う物品リスト、そして余ったらごほうびをあげるというのはどう? 「模様替えプロジェクト達成記念お祝いイベント」!そこに友達でビアパーティ! お祝いするっていうのは、すごく大事。これはフレッシュスタートというのを高らかに宣言することになるから」 |
田中 |
「そうか……やってみます。新しいスタートですもんね。いつもやると1日2日かかりそうな気がしてやらなかったんですが」 |
本間 |
「直球で、気合入れてやれば半日でできる! 目標6時間でやるとかにして、5時間で終わったらビール、とかね。タイムトライアルでやるのはいい方法です。何月何日にやるってばしっと決めて、その日にでもお祝いしちゃう。すると、夕方、友達が来るじゃない。やらないわけにいかないですよね。これもひとつの手ですよ」 |
田中 |
「はい、チャレンジしてみます。そうだ、“かわいい紀子ちゃん”も忘れずに!」 |