本間 |
「そうか。自分で経験積んで、面接を受けて入社するっていうシナリオを描いているわけね。
うーん・・・それはないね(笑)。さっきその人に『バイトという安いお金でもいいから編集をやりたいか』と聞かれたといっていたよね。 それはあなたの覚悟を試しているんじゃないかな。でもあなたがそれに応えるのがプレッシャーになってしまうということは、あなた自身の気持ちが揺れているんじゃないの?」 |
山田 |
「そうですね。だからその時はファッション誌でしたらなんでもやります、とお答えしました」 |
本間 |
「じゃあさ、世の中にファッション誌がなかったら、どんな職業につく?」 |
山田 |
「えっ。なかったらですか?!・・・ファッションのデザインとかもしくはOLとか公務員ですかねぇ」 |
本間 |
「いまデザインと言ったけど、山田さんは大学でフランス文学を専攻したということは、デザインは専門学校とかで改めて勉強しなくちゃいけないよね。そういう意志みたいのはあるの?」 |
山田 |
「あります」 |
本間 |
「あっ、あるんだ(驚)。あのね、今まで僕と話してきて、今の一言が一番、山田さんの意志がこもっている言葉だった。なんか言葉の響きというか、山田さんの専門学校に行く気持ちの強さみたいなものが伝わってきた」 |
山田 |
「え、そうですか?!」 |
本間 |
「うん。もし、ファッション業界以外の職種に行くとなったらどうする」 |
山田 |
「そうですね、何か創る事をしていると思います。そうでなかったら、以前は法学部にいたので法律関係の仕事をしていると思います」 |
本間 |
「そっか。やっぱり何か創る仕事がしたいんだね。それになんだかいろいろやっているんだ。器用なタイプなんだね。それじゃあさ、編集の仕事も創る仕事じゃない。魅力を3つ挙げられる?」 |
山田 |
「取材で色々な人に会える、自分の視点で物がつくれる、そしてそれを人に伝えることができるということですかね」 |
本間 |
「編集以外でその3つが出来る事ってなんだと思う?テレビとか、広告なんかもそうだけど高倍率の業界だよね。あとはウェブとかあるけど、自分でファッションサイトを作ろうとか思った事ない?」 |
山田 |
「ありますけど、人に何か教えてもらってその上で作りたいので・・・」 |
本間 |
「あのさぁ、デザインの専門学校行ってみたら? 紹介者というカードは魅力的なんだけど、経験を積んだからといってファッション誌に行ける気がしないんだよね。
それに、さっきコミュニケーション能力がないっていってたけどそうではなく、内に秘めた気合が伝えられないのではないのかな」 |
山田 |
「そうですか・・・」 |
本間 |
「面接官ていうのはプライドをずたずたにするのが仕事なんだよ。それが役割だから気にしないでみて」 |
山田 |
「はい」 |
本間 |
「そろそろ決心を決めようか。いま山田さんには3つの道がある。
(1)紹介者カードを使ってファッション誌の経験を積む。
(2)次に親に納得してもらうため正社員への道を模索し、そのなかでさっきの魅力の3つのうちの一つができればいい。
(3)そしてデザインの専門学校に行く。
あとは提案なんだけど、出版社にライティングサンプルを持っていって見てもらおう。それで駄目なら紹介者カードを使って、それでも断られるかもしれないから、そしたらどっかに就職しよう。とにかく、時間決めなきゃ。例えば、年末までと」 |
山田 |
「はい。わかりました!」 |