2002年2月7日発行(毎週木曜日配信)
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女性国会議員メルマガ『ヴィーナスはあと』 第12号【前編】
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*** *** 小泉内閣の支持率が急降下。その原因は田中真紀子
*****v***** 外相の更迭だといわれています。
*********** 実際に政治の現場にいるヴィーナス議員たちは、この
********* 騒動をどんなふうに感じているのでしょうか。
******* 「ヴィーナスはぁと」では、毎回担当をわりふってい
*** ますが、それ以外の議員も自由に参加できる形式にして
* います。今回、超多忙なスケジュールの合間をぬって、
たくさんの議員が意見やコメントを送ってくれました。
長くなるので、前編、後編にわけてお届けします。
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目次
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■「田中真紀子外相更迭」についてどう思うか?
(前編)
●川田悦子 (衆議院議員・無所属)
●松島みどり(衆議院議員・自民党)
●水島広子 (衆議院議員・民主党)
●山口わか子(衆議院議員・社民党)
(後編)
●吉川春子 (参議院議員・共産党)
●福島瑞穂 (参議院議員・社民党)
●山内惠子 (衆議院議員・社民党)
●岡崎トミ子(参議院議員・民主党)
●八田ひろ子(参議院議員・共産党)
●中林よし子(衆議院議員・共産党)
●武山百合子(衆議院議員・自由党)
■「ヴィーナスはぁと」参加議員一覧
■編集後記
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「田中真紀子外相更迭」についてどう思うか?
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今回の更迭については、読者の関心がとても高いようです。例えば、こん
な意見も届きました。
「今回の外相更迭問題に対して、小泉首相の判断はとんでもない誤りです。
真実を追究する姿勢がありません。過去の田中さんの言動には多くの問題が
あり人格を疑う事もありましたが 今回の発言は正に正しいと思います。党
派を問わず真相を究明して下さる事を望みます」
時間がとれない議員には短いコメントだけいただきましたが、最終的に
11人のヴィーナス議員の声が集まりました。立場は違っていても、今回の更
迭に関しては、みなさん疑問を感じているようです。
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「いまこそ政治家は官僚の腐敗にメスをいれるべきである」
川田悦子(衆議院議員・無所属・東京)
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多くの政策で一致していたある社民党の議員とは田中外相への評価では違っ
ていた。そのことをめぐって議員会館の廊下で論争したことがあった。彼女
は田中外相と小泉首相はセットであるから、小泉首相を倒すためには人気看
板大臣を倒すことが大事だと言う。彼女は「外相としての仕事がなっていな
い」と予算委員会などでも厳しく迫った。
しかし、福島瑞穂さんは同じ社民党でありながら違っていて、私と近いも
のがあった。私は、外務省の機密費問題や官僚の腐敗ぶりを内部から明らか
にできるのは、現時点で田中外相をおいていないと感じていた。
外務省を頂点とする官僚社会の腐敗を暴かれるのを恐れている人々は「田
中外相はヒステリー」「外相としての資質に欠ける」と言い続け、何として
も辞めさせようと策動していたから、「外相の仕事をしていない」などと追
及するのは腐敗を温存する勢力を助けることになると私は思っていた。
しかし、田中外相を擁護するのは、靖国参拝などをやってのけた小泉内閣
の延命を助けることになるという意見は根強くあったと思う。確かにそうで
あるが、その小泉首相の前倒しの靖国参拝に対して田中外相は「姑息なやり
方」と批判していた。
そして今回のNGO排除問題に端を発した田中外相更迭に対し、多くの人は
激怒し、小泉首相の支持率は一気に下がった。田中外相に対する今までの評
価はたいへん難しく、私の評価が絶対正しいとは思わない。小泉内閣の一員
であるから批判するという意見の方が、筋が通っているのかもしれない。し
かし、私は小泉内閣のもとでの田中外相の役割はたいへん大きかったと思う。
私は田中外相と特別に親しい関係にはない。厚生労働委員会で一緒になっ
たとき、「お坊ちゃん、お元気?」などと何度か声をかけられたことがあっ
たが、すぐに大臣になってしまったので、直接政治的な話をしたことはほと
んどない。
しかし、たまたまエレベーター前でお会いしたときや、クエスチョンタイ
ムの終了後に田中外相が出てくるのを待って「がんばってくださいね」と声
をかけることはあった。それが私にできる応援の仕方であった。そのとき、
「外務省は恐ろしいところよ」と田中外相は私につぶやいていた。
私が田中外相を応援していることをマスコミも知っていたようでテレビ朝
日は私を番組に呼んでくれて、朝の生番組にも出演したことがあった。
それからテロ対策特別措置法案が通過した後、「戦争はいやだ」という署
名簿を持って私が予算委員会室の前にいたとき、田中外相からそれが何であ
るか尋ねられたことがあった。それで私は「生まれて初めて署名を集めた人
がいて、その方が長野県から歩いて国会に持ってこられたものです」と早口
で説明した。すると、見せて下さいといって2冊分を預かってくださった。
田中外相に対しての各議員のスタンスはさまざまであった。女性議員の中
には男性議員と同様に妬みなどから揶揄する人もいたが、田中外相の支持率
が高いからと自分の選挙区に行けば、田中外相を支持する演説をする人もい
た。
私は田中外相がどんな人物なのか分からない。田中外相が何をしようとし
ているのかもはっきりは分からなかったが、この間の言動から、徹底的に外
務省の改革をしようとしていたと思う。支持率が高いから田中外相が正しい
のではない。支持率はマスコミ誘導によって作られることは明白だ。
今回の田中外相の人気は、外務省をはじめとする腐りきった官僚社会の改
革を行おうとしていたからである。さまざまな妨害があっても立ち向かって
いたから多くの人は支持したのである。
その人気の外相をついに小泉首相は更迭した。田中外相が「がんばってい
るのですけどね」と悔し涙をこぼしたとき、小泉首相は「おんなの涙は最大
の武器ですからね」と女性全体に対する侮辱発言をもおこなった。もちろん、
野党の女性20人近くがすぐに首相官邸に抗議に行った。
外相更迭の引き金はNGO排除問題である。しかし、小泉首相はいつ更迭
するかチャンスをねらっていたようにも思える。更迭は、アメリカのアーミ
テージ国務副長官が来日した際、会わなかったときから考えられていたので
はないかと思う。田中外相はこれでアメリカの威信を傷つけたとされ、更迭
が考えられたのではないだろうか。
さらにアメリカの軍事政策にも批判的な発言をしたり、従来の外相とは明
らかに違っていたりして、アメリカべったりの日本政府の中で異色の外相で
あったから、外務省にとっては最大の敵であったと思う。それが更迭の大き
な理由だと思う。
今回、野上事務次官と喧嘩両成敗などという姑息なことで更迭したが、こ
れはあいまいなまま決着するときの常套手段、「臭いものに蓋」策である。
しかし、これには今回多くの人は納得していない。まして鈴木宗男氏が自ら
議院運営委員長を辞退し、それが受理されたというのでは尚更である。どち
らが嘘をついているかは、多くの人は見抜いているが、国会はそのことをはっ
きりさせる責任がある。
田中外相の功績は、9ヶ月という短期間に外務省と族議員(特定の議員)と
の癒着ぶりを暴露してくれたことである。田中外相も途中で意見がぐらつい
て、前言を翻したこともあったが、たいへんな虐めの中でとても健闘したの
ではないかと思う。
田中外相は外務省を去るとき、政治改革は党派をこえてとりくむ問題だと
述べた。まさにその通りである。いまこそ政治家はみずからの政治姿勢をあ
らため、また官僚の腐敗にメスをいれるべきである。
私は政官財の癒着構造が政治をゆがめており、今の自民党政治を終焉させ
なければ日本に未来はないと思っている。その自民党に籍をおいている田中
真紀子議員に私が拍手を送るのは、矛盾しているかもしれない。しかし、と
にかく官僚に操られる政治家であってはならないという点で一致していると
思う。
今回の更迭で誰が一番喜んでいるのかといえば腐りきった外務省官僚であ
る。政治改革がまさに今、必要である。
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「明らかな判断ミス。でも改革を進められる人は小泉首相しかいない」
松島みどり(衆議院議員・自民党・東京)
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小泉首相はバカな判断をしたと思います。私は、2月2日朝のフジテレビ
「情報プロジェクトS」にこのテーマで出演したときも、そう発言しました。
田中真紀子さんが外務大臣として適切な人物だったかどうかは別として、
今回のNGO問題では、田中大臣に非はなく、喧嘩両成敗というのは当たら
ない。あの朝の外務省での打ち合わせで、某議員の名前が出たかどうかはわ
かりませんが、それはささいなことです。もともと「外交はおれたち外交官
の専管事項。NGOなんかに偉そうに言われる筋合いはない」と考え、NG
Oに冷たい外務省が、某議員の意向を気にしてアフガン復興会議に出席させ
ないようにしたという事実が重要なのです。
29日夜11時過ぎからの衆議院本会議で与党だけの出席により第2次補
正予算が通過したあと、1回生議員10人ほどで食事をしていたところに
「田中外相更迭」のニュースが飛び込み、全員、「なんで今」とびっくりし
た気持ちで一致しました。
しかし、NGO問題で外務省の事務方や某議員に対し、正義のシンボルと
なって、人気最高、株式市場の言葉でいえば「ストップ高」の時に、クビを
斬ったわけですから。同僚議員のなかには、「したたかな小泉さんのことだ
から、次は緒方貞子さんということで本人の了解を取ったうえでの真紀子さ
ん更迭だろう」と推測する声もあり、結果的にそうではなかったのですから、
なおさら信じられない気持ちでいます。
昨年12月初めころ、真紀子さんが指輪騒動とか、外国の要人との会合に
遅刻が続いたとかで評判が落ち、外務大臣を辞めさせられるかもしれない、
と見られていたとき、私は、真紀子さんを応援するテレビ番組に野党の女性
議員2人と一緒に出演しました。
そのとき、自民党の若手議員仲間に「テレビで真紀子さんの擁護をした」
と言ったら、「みどりちゃん、国益を考えてモノを言え」とみんな私を批判
したのです。党内は、若手も含めて、田中大臣を辞めさせるべきだ、との論
調一色でした。今度は、その同じメンバーが「なんで今」と驚き、小泉首相
の判断ミスだと感じたのです。
私は、政治の世界に入る前の新聞記者時代から小泉首相と接する機会が多
く、昨年2月、「わかりやすい言葉で政治を語り、国民の人気の高い小泉さ
んが総理大臣になるべきだ」と言って、総裁選への立候補を一番早く主張し
た議員は私でした。
私は森派の1回生ですが、当時は小泉さんがこの派閥の会長を務めていま
した。(世間では、真紀子さんが出馬を決心させたことになっていますが、
最初に言い出したのは私であり、真紀子さんは1カ月ほどの間、私に会うた
び、「小泉さんはまだ、決心しないの。あなた、新聞記者出身なんだから、
代わりに出馬表明の文章を書いて発表しちゃいなさいよ」などとけしかけて
いました)
私が好きな小泉さんの言葉に「永田町の常識は国民の非常識。国民の常識
は永田町の非常識。私は国民の常識に沿っていく」というのがあります。今
回の決断は、これに反してしまったと思います。
田中大臣更迭の前日、夜11時57分に衆議院予算委員会で補正予算が通
り、その後、自民党の代議士会がありました。私のすぐ後ろに、塩川正十郎
財務大臣と安倍官房副長官が座っていて、私は二人とも親しいので、話を聴
いていたら、塩川大臣が安倍副長官に「これは外務省の問題であって、内閣
の問題にしたらあかん。私も福田さん(官房長官)に言うけれど、あんたか
らもちゃんと言うてや」と話していました。予算委員会でも、塩川大臣が津
島予算委員長に近づいて「これは外務省の問題」と語っている場面を後でテ
レビで見ました。まさにその通りだと思います。
小泉さんは、田中外務大臣を更迭したあと、参議院の予算委員会で「外務
省は鈴木氏を気にしすぎている」とか、「今後、(外務省への)鈴木氏の影
響力は格段に少なくなる」とか答弁しました。後者のほうは当たらないと私
は思っていますが、それにしても、こういうことを、どうして、田中外務大
臣を更迭する前の衆議院予算委員会で言ってあげなかったのでしょう。残念
です。
小泉さんはこのことで、支持率が急低下しました。しかし、小泉さんが引
きずりおろされたら、今、それに代わる総理大臣はいません。自民党にも他
の党にもいないと私は思っています。小泉さんが総理大臣として改革を進め
ることが日本の政治にとって一番いいのです。
だから、小泉さんはこれからが正念場ですが、どうか、皆さんも、今度の
判断ミスはそれはそれとして、今しばらく、小泉さんの改革の姿勢を信じて
あげてほしい。見捨てないでいてほしいのです。
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「事実を明らかにしさえすれば、国会審議は正常化するのに」
水島広子(衆議院議員・民主党・栃木)
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今回の外務省NGO問題にはいくつかの重大な問題が含まれています。
まず、大臣か事務次官かどちらかが国会で偽証をしていること。国会にお
ける答弁は行政を行う上での重大な根拠となるもので、現職大臣や事務次官
の虚偽答弁が許されるということになると、政治の前提そのものが崩れてし
まいます。どちらがウソをついているのかをはっきりとさせる必要がありま
す。
また、NGOの出席拒否問題に鈴木宗男議員の圧力があったかどうかについ
ても、圧力があったとすれば、典型的な日本の政官財癒着構造そのものです。
大臣でもない特定の政治家が省庁を私物化して利権をむさぼる。そんな構造
が日本をここまで大変な状況に追い込んできたのです。与党の政治家が目先
のメンツや利権ばかりを追求してきた結果、長期的なビジョンに基づいて国
政を組み立てていくということができなかったのです。
もしも鈴木宗男議員の圧力がなかったとすれば、これはこれで問題です。
ちょっとでも政府に批判的なコメント(大した批判でもない)を新聞のコラ
ムで述べた程度で国際会議への出席を拒否するなど、日本の外務省のNGOに対
する認識がその程度だったということを国際社会に露呈したことになります。
これは日本の恥です。
NGO代表の方の証言からも、圧力はあったと思われますが、圧力を認めよ
うとしない外務省は、自らの非常識ぶりをさらに国際社会に発信していると
いうことになります。この問題の徹底解明が必要なのは、このような事情に
よります。
さて、本題の「外相更迭劇」ですが、事実を何も解明しないまま、関係者
全員の首を切っておしまいにする、というのはきわめて不公正な従来型の解
決手法だと言えます。
小泉首相は、参院予算委員会で、「3人をやめさせなければ野党は今日の
審議に出てこないところだった」などと発言していましたが、野党は、更迭
劇の前に、「参議院は正常審議の中で問題点を追求していく」という方針を
固めていたのですから、言いがかりも甚だしいのです。あのタイミングで3
人をやめさせなければならなかったのは、あれ以上田中真紀子さんに大臣と
して答弁させるわけにはいかないという「政治的」判断が働いたのでしょう。
与党の言い分である「今は外務省のドタバタよりも景気対策を」というも
のについても、政官財の癒着構造がある限り、また、国会の場で事実をきち
んと明らかにしていくという姿勢を確立できない限り、日本に健全な経済や
雇用がもたらされることはないと思っています。そもそも、事実は一つなの
です。その事実を明らかにしさえすれば、国会審議は正常化するのですから、
景気云々というのは論理のすり替えと言えるでしょう。
3人を同時にやめさせるという手法については、小泉首相らしいと思いま
す。小泉さんは、今までも、目前の問題を解決できないときに、その事実か
ら国民の目を逸らすために、別のところで派手なパフォーマンスをぶち上げ
るという手法をとり続けてきました。今回、事実解明という課題から逃げ、
田中さんの後任に緒方貞子さんを登用しようとしたのも良い例です。
なお、本題からは外れますが、小泉首相の「女の涙」発言にも呆れかえっ
ています。早速、超党派の女性議員で官房長官への抗議行動をしました。
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「旧いままの自民党、外務省がほくそえみ、凱歌をあげている」
山口わか子(衆議院議員・社民党・北陸信越)
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田中外相が辞めてしまうことで、NGO不参加問題、鈴木宗男議員の介入問
題、ひいては外務省の機密費問題までが、なにひとつ明らかにされずに終わ
ることになります。
これでほくそえみ、凱歌をあげているのはだれか。それが旧いままの自民
党、外務省であることは一目瞭然。端的にこの小泉内閣の本質を表してしまっ
たのです。
すでに国民は真相を知っています。それを闇に葬り、知る権利さえ恥知ら
ずに奪うという今回のやり方が、支持率の高い内閣であっただけに、一層の
政治不信を招くことになることがわかっていない小泉首相には、憤りを抑え
られません。こうしたやり方を許さないために、これで終わりにさせないた
めに、あきらめず努力を続けたい。
そのためには、私ども心ある国会議員が連携して追及することは当然です
が、国民の皆さんがきちんと評価してチェックしてくださることが大きな力
となります。
※山口議員は、現在腕を骨折していて、ワープロが打てないそうです。今回
は、山口議員が口述したコメントを秘書の方が筆記して送ってくださいまし
た。
(後編に続く)
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女性国会議員メルマガ『ヴィーナスはぁと』
編集長:ロゼッタストーン 弘中百合子
発行 :株式会社ロゼッタストーン
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