シネマの達人 ―最新映画星取表― バックナンバー一覧
【バックナンバー vol.8】

過去のない男
スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする
ピノッキオ

「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」

剣と魔法が創るファンタジーの世界観は大好き!前作があるからキャラクターに愛着も生まれるわけで、終始「行け行け〜!」というノリで見てました。 「早く指輪捨てればいいだけの話じゃん」という人もいたけど、それを言ったらこの手の映画は楽しめん! 注目は、気づけば「SWエピソード?」にも出ているサルマン役のクリストファー・リー。あの高貴な威圧感はさっすが元祖ドラキュラ伯爵。 しかし、全体的に味方側がかっこよすぎて、悪役キャラの影が薄くなっている気がします。よし、その辺は次回作に期待しよう。 何せまだ話が途中だから仕方がない!そういえば「ハリー・ポッター」のドビーに続いて、ゴラムも最近CMに登場。彼らも大変ね…。
(波多野えり子)


星の点数 :  = 1 = 0.5
過去のない男

監督:アキ・カウリスマキ
出演:マルック・ペルトラ、カティ・オウティネン
過去のない男

古東久人    
★★★★★
美男美女とはお世辞にも言えない、おっちゃんとおばはんのラブストーリー。このおっちゃんはおやじ狩りに遭い、頭を殴られ、瀕死の重傷。 というか死んだかと思ったら、そのミイラのように包帯を巻かれた男は実は生きていて、妙に笑いを誘う。 結局、男の失った過去とは、忘れたかった過去だとわかって、この映画の奥の深さを思い知った。暴漢に襲われても、幸せになれるんですね。 クレイジーケンバンドの「ハワイの夜」が、まだ耳に残っている。
にしかわたく  ★★★★
「昔の映画ってシンプルでいいよなぁー」ってよく思います。だけどビデオ屋で借りるのは大抵が新作。 なんでかっていうと、ズバリ「楽だから」。今の映画ってやたらと情報量と刺激が多くて、自分の想像力使わなくていいから楽なんです。 世の中みんなその楽ちんさに慣れちゃってるので、今の時代に昔みたいなシンプルな映画作るのって、かなり冒険。 だけどこのカウリスマキって監督、いつもその危ない綱渡りを平気な顔してやってのけちゃいます。 今回の映画もとっても愛らしくて、おかしくて、この上なくシンプルでした。恥ずかしながら、元気もらっちゃいました・・・・。
山本聡子   ★★★☆
噛めば噛むほど味の出る、スルメのような映画。なんといっても“間”がすごくいい。小津映画に漂うようなおかしさがある。 最小限のセリフとスローな世界に引き込まれ、ずっと浸かっていたいような気分。やたらと姿勢がよい過去をなくした男。 彼を取り囲む素朴な人々との生活の中では、ひとりの善良な(?)銀行強盗や強欲な家主などに投影された資本主義社会はとても住みにくいものに見える。 本当の幸せとは?金を持つことが果たしてどれだけの意味を持つのか、嫌でも考えてしまう。ただひとつ言えるのは、人間、体ひとつで生きていけるのです。 もちろん、生きる意欲さえあればね!
増田統    ★★★
北欧、とりわけアキ・カウリスマキの映画にはどこか東洋的な感性がある。言葉にも、なぜか耳馴染みのある響きを感じるせいか、 小津へのオマージュを捧げた『浮き雲』しかり、この映画にも日本的な美学が息づいているように思える。記憶喪失の男が捜し求めるのは過去ではなく、 日常生活のささやかな喜びが連なる未来だ。その男と彼を愛するイルマの面差しは、ともに能面のような無表情でありながら、 それゆえ視線のさりげない交歓やほのかな色合いの変化が、豊穣な感情を伝える。 そしてクレイジー・ケンバンド!かつて「雪の降る町を」を新鮮な解釈で聞かせたカウリスマキが、列車の中で寿司をつまむこの男の姿から醸し出すのは、 過去の惜別ではなく、日々の淡々とした決意だ。人生はどこまでも続くのである。

スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする

監督:デイヴィッド・クローネンバーグ
出演:レイフ・ファインズ、ミランダ・リチャードソン

にしかわたく 
 ★★★★
 イヤイヤこれはとてつもなく辛気くさい映画ですよ。見事に娯楽性ゼロ!さすが元祖変態クローネンバーグ。久々の本領発揮という感じです。 過去の記憶の迷宮に迷い込み、一生そこから抜け出られない男をネチネチッとしつこく撮っています。 主人公は精神病者なのですが、過去を愛し、過去に怯え、過去を改変し、毎日過去を生きているハイパー後ろ向き人間の私としては、 とても他人事とは思えない映画でした。前向きな人が見てもきっとちっとも面白くないと思います。 主役のレイフ・ファインズはまったくいやんなっちゃうくらいうまかったです。
中沢志乃   ★★☆
前知識もほとんどなく行ってみたら、「イングリッシュ・ペイシェント」のレイフ・ファインズに「ミラーズ・クロッシング」のガブリエル・バーンと 豪華キャストの1本で、内容もなかなかの意欲作だった。この映画であらゆる現実と想像、夢が交錯する物語への答えがすっきりと出た感じもするし、 また、精神障害や多重人格の方々の気持ちも何となく分かる気がした。精神が現実についていけなくなったマザコン男(?少々勝手すぎる解釈でしょうか) の素敵な裏地のあのコートを選んだ衣装さんは素晴らしい!
増田統    ★★
さながら白昼の悪夢だ。まるで狂気に吸い寄せられるように、故郷の町に戻る主人公デニス。殴り書きのように綴る記号のような文字や、無為に畑に佇む謎の三人組、 不安を煽るかのようなガス工場の威圧感、殺風景な部屋にしみが浮き出た壁など、それらデニスの主観による幻想と現実、過去と現在の交錯の軸を成すのは、 あらゆる女性の顔に浮かぶ母の面影だ。 それらは、“スパイダー”と呼ばれた幼時の過剰な愛情ゆえに増幅された、屈折した性が生み出した憎悪なのか? 真実は闇のままだ。そんな不可解な深層心理を、時制を行き交う重層的な構成で自在に操る映像感覚は、 狂気の狭間に潜む正気の鋭利な凄みを忘れないデヴィッド・クローネンバーグの独壇場だが、「裸のランチ」などで見られた圧倒的な陶酔感には欠ける。

ピノッキオ

監督:ロベルト・ベニーニ
出演:ロベルト・ベニーニ コレッタ・ブラスキ
ピノッキオピノッキオ

増田統    
★★☆
躁患者のごとき饒舌な冒頭のピノッキオに、拒絶反応を示す人も少なくないだろう。が、『ライフ・イズ・ビューティフル』ただ1作で、 なぜかヒューマン監督と誤解されたロベルト・ベニーニの本質は、どこまでもベタなイタリアン・スラプスティックにある。 ねずみの馬車がフィレンツェの町を走るオープニングしかり、ベニーニの狙いはイタリア人気質あふれる大ボラであることに思い至るや、 身を捧げんばかりの純愛を青い女王に告白したり、ジュゼッペじいさんに大げさに抱きついてみせたりといった、楽天的な調子の良さも腑に落ちるというもの。 大道芸風の人形劇のいかがわしさ、ロバに生まれ変わった友人との愁嘆場も同様、ドタバタ劇のピノッキオはベニーニの赤ん坊のごとき“マカロニ喜劇” の表われそのものだ。
山本聡子   ★★
久々にファンタジックな映画を見ました。まずは、ロベルト・ベニーニにはやられた。50歳にしてあのパワーはすごい! あの小枝のように細い体、くるくると変わる表情、信じられないほどよくまわる口など、生まれながらの道化師であるベニーニにしかできないはまり役。 彼にピノキオの素質を見出したフェリーニもエライ。ただ、大人の私はそんなにピノキオに感情移入できずに終わってしまったのが残念だった。 でも、結局この話は子供に夢を与えるというよりは、真面目に勉強して親孝行すれば幸せになれるという超定番の道徳を語っているんだなよなあ、うーん・・・。
編集雑記

いわゆるフジの「月9」で、映画業界を舞台にしたドラマが始まりました。「東京ラブ・シネマ」。主人公の江口洋介はミニシアター専門の弱小配給会社の社長、 相手の財前直見は大手配給会社のミニシアター担当。大手のほうは「シカゴ」などのギャガがモデルみたい。江口の会社の棚にはキネマ旬報が並んでいました。 先日、キネ旬のセミナーに参加しましたが、全国から映画業界への就職を希望する若者たちが集まっていて、その人気の高さに驚きました。 ドラマがどれほど現実を映してくれるかわかりませんが、見た目は華やかでも、実際の仕事はハードです。
(古東久人)
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