シネマの達人 ―最新映画星取表― バックナンバー一覧
【バックナンバー vol.7】

戦場のピアニスト
裸足の1500マイル
アレックス

「ボウリング・フォー・コロンバイン」

アメリカにおける銃規制という難しいテーマを、笑いを交えた手法で飽きさせない話に仕上げ、米英ほか日本でも記録的なヒットをとばしているドキュメンタリー。 信念や理論武装一本やりでは自分と違う思想を持った人間を動かすことは難しいが、そこにユーモアを混ぜることによって息をつかせ、 ニュートラルな気持ちにさせることができる。それに気付いている表現者は意外と少ないような気がするが、ムーアは軽々とやってのけていて、 その戦略性に脱帽した。ムーアの見た目までファニーな感じでおもしろいのは反則?いやいやなんでもありでしょう。
(岩崎真一)


星の点数 :  = 1 = 0.5
戦場のピアニスト
戦場のピアニスト

中沢志乃 
  ★★★★★
100点満点で10000点の映画!!映画を見て初めて「1800円では安かった…」と思った。映画のメイン・メッセージをはっきりと捉えるのが好きな私だが、 これは全体を、感情を感じる映画だと悟り、すべてを受け止め、映画が終わった後も呆然と、言葉を発したら気持ちが溢れ出そうで何も喋れなかった。 後で聞けば、一緒に行った彼も同様で、しばらくは2人とも微笑むだけで沈黙した。既に私の中では今年一番の兆し。 あえて何も批評せず、分析せず、ただただただただ是非とも!!見て欲しい。
Nidaタキグチ   ★★★★
あれ?金城武、激ヤセ? というのが、天才ピアニスト(エイドリアン・ブロディ)のファースト・インプレッションだった。 このために10kg痩せたらしいが、いじめられた子犬のような彼の頼りない表情は、あまりにもはまり役。薄幸の青白いオーラまでも見えてきそう。 だがそんな彼でも、背筋をピンと伸ばしてピアノを弾きだすと、内に秘めた激情がメロディーとともに饒舌に吐露されてくる。 ドイツ軍将校の前でもひるむことなく、ただ一身に弾きつづける。ただ、生きたい=弾きたいという本能的な行為。 二人の人間の本質的な強さが逆転する恍惚のシーンは、涙なしには語れない!!!
にしかわたく   ★★★★
感情に流れない、しっかりとした映画でした。『シンドラーのリスト』とは正反対ですね。 (私は『シンドラー』も好きですが・・・)それにしてもさすがポランスキー。ほとんど自伝的と言ってもいいテーマなのに、ひたすら静かに、淡々と撮っています。 それでいて、観客の存在を忘れることは一瞬たりともありません。不謹慎なまでの娯楽性。骨の髄まで映画監督です。 主役のエイドリアン・ブロディがいかにもピアニト〜って顔してて気に入りました。
古東久人   ★★★★
戦争するとかしないとか世界が言い争っている現状を観ていると、人間っていつになったら過去の教訓を生かし、賢くなるのだろうと思う。 こういう映画を観ながら、「そう言えば昔の人間は愚かにも戦争なんてやっていたんだね」なんて語れる時代がくればいい。 いまこの時期に薦めないわけにはいかない映画だ。「ライフ・イズ・ビューティフル」と同じくらいの感動は与えてくれる作品に仕上がっている。 ロマン・ポランスキーといえば異才というイメージがあったが、70代を迎え、入魂の一作を世に問うた。それを「奇跡」と呼んだ、おすぎの気持ちもわかります。

裸足の1500マイル
裸足の1500マイル

増田統 
 ★★★★
見渡す限りのフェンスが連なる荒涼たる大地と、涯てしなく低く広がる深く空。その間を自由自在に翔ける鳥の羽ばたきに、モリーは帰郷の思いを託したのだろうか。 オーストラリアの恥ずべき歴史を、それに加担した白人の末裔が映画化する自責が、実話の重みを超えて映画的なエモーションを呼び起こす。 海外に旅立った監督フィリップ・ノイスと撮影監督クリストファー・ドイルは、この帰郷作で自らの足で未来を切り開いたモリー姉妹への共鳴を宣言する。 それは、不屈の魂を絶やさない“先達”への尊敬であり、その感情の迸りが観る者の勇気をも呼び覚ますのだ。
Nidaタキグチ  ★★★☆
これから見る人はこれが実話であることを肝に銘じて鑑賞されたい。少女の目の輝きに圧倒された。音楽も独特でよい。 エンターテイメントとしての要素には欠けるが、生きる勇気を与えてくれる価値ある映画。少女が灼熱の大地に倒れ、意識おぼろげながら空を見上げた瞬間、 雄飛する鷲(だっけ?)が目に入り、また希望を取り戻して立ちあがるシーンが、単純だけど大好きだ。大地と空の美しいコントラストなど、映像そのものが感動的。 アボリジニの少女たちのデザート(砂漠)色の肌は、うちの旦那の肌にも似ていて個人的にとてもスキッ!
古東久人  ★★★
戦争と並んで、人間の愚愚かな行為のひとつが「人種差別」。そんなテーマに真っ向から突き進むのではなく、軽やかに心の解放を謳ったロード・ムービー。 そんな印象の映画である。アボリジニの少女の勇気ある行動には拍手を送りたいが、もう少し道中に試練を設けたほうがドラマとしては盛り上がっただろう。 淡々としたドキュメンタリー・タッチの描写も魅力ではあるが。昨年の東京国際映画祭で観た収穫の一本でした。
中沢志乃   ★★☆
20世紀初頭のオーストラリア。「入植者」である白人が善意と使命感から自分たちの文化に染めようと、 「先住民」であるアボリジニと白人の混血児を無理やり母親から引き離して施設に入れていた。 この映画は、その混血児の施設からの逃亡劇だが、これを見て現ブッシュ大統領の「フセインからイラクの人を救うために攻撃をする」 というスピーチを思い出したのは私だけだろうか。人は誰も自分が“普通”。でも、それは独りよがりだと、モリーの視点で見た、 整然と並んだ暗い施設のベッドが表していた。思いあがった勘違いから生まれた果てしない道無き道が、いつかはっきりと見えるといい。

アレックス
ウエルカム!ヘブン

にしかわたく 
  ★★★★☆
いやー面白いですよぅこの映画。『パルプ・フィクション』以来、ストーリーの時間 軸をいじるのがひとつの流行みたいになってますが、 この映画の構成はシンプルにして最大の効果をあげています。冒頭のシーンで観客を地獄のどん底に突き落としとい て(マジで吐きそうになった・・・) そこかららせん階段を登るみたいにお話が進んでいきます。まったく救いのないストーリーなのに、見た後不思議にあったかい気持ちが湧いてきました。 それにしても映画ってのは怖いですね。久々に一本取られまし た。
Nidaタキグチ ★★★
暴力とセックス、生と死が剥き出しになった映画。見続けることを途中で放棄したくなる瞬間もある。阿鼻叫喚の世界で唯一の救いとなっているのが、 ストーリーの逆進行だった。逆であることで、わずかではあるが、映画の世界にどっぷりつからず冷静 に客観的に見ることもできる。 逆にいえば、こういう技が効いてないと、鑑賞後に吐いてしまいそうな、やばい作品。でも「時計仕掛けのオレンジ」には一歩及ばず。 だって、そもそも妊婦があんな露出度の高いドレス着て、スキだらけのサンダル履いて踊ったりしますか? 最愛の人の子を身ごもったモニカ・ベルッチの喜びの笑みが嘘になってしまう・・・。
増田統   ★★☆
言葉を失うとはこのことだ。すべてを露悪的なまでに明らかにすることで、観客の想 像力を一切拒絶し、現実の脅威に無防備に立ち向かわせる。 時制の変転はギミックではない。ゲイや東洋人、身障者への剥き出しの偏見そのものの映像にも、監督ギャスパー・ノエのしたたかな挑発が潜在する。 むしろ吐き捨てられて上等というようなふてぶてしい開き直りが覚醒させる復讐の結果の衝撃は、しかしラストの歪んだ幻想で昇華される。 暴力の洪水の中で浮遊する生命の儚い美しさ。この映画は易々と他人には勧められない、しかし好悪を超越した問題作であることは間違いない。
編集雑記

主演映画「黄泉がえり」がヒット中の草剪剛ですが、ドラマ「僕の生きる道」も黒澤明の「生きる」を彷彿とさせる素晴らしい出来栄え。 一生懸命に生きようとする姿には心を打たれます。人間は誰でもいつかは死ぬわけだから、余命が1年か何年か、何十年かの違いでしかない。 だから一日一日を大切に生きなくちゃ。黄泉がえらないためにも。SMAPの歌う主題歌「世界に一つだけの花」も名曲です。毎日、歌っています。
(古東久人)
▲このページのTOPに戻る
Copyright (C) 1999-2005 ROSETTASTONE. All Rights Reserved.