Nida タキグチ ★★★
「我々はどこからやってくるのか、我々はどこに行くのか、そして我々は何者なのか」ゴーギャンがタヒチで描いた絵のタイトルである。 難解で根本的な問いを、文学や絵画でなく、たとえば映画で表現したら・・・本作はそんな試みなのではと思う。
ピカソのタッチにも似た力強いグラフィックが抽象的な画を生みだし、だからこそ矢継ぎ早にくり広げられる哲学的な会話にメッセージ性が生まれてくる。 確かに手垢のついたハリウッドスターが実存主義を熱弁したところでしらけるかも。従来の映画がルネッサンスや写実主義ならば、
本作はまさしくピカソのキュビスム。心の眼で何が見えるか、既成概念を捨てて新しい世界に身をゆだねたい。タクシー船のアヒルはリアルに見えた気が・・・。
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高野麻結子 ★★★★
「オレにとって運ぶ行為は人格を広げること」というボート型のタクシー運転手(アヒル付)をはじめ、夢と現の中で多くの人が様々な言葉を語っていく。 伝えたい事柄よりも伝え方によって取捨選択がされがちな今だから思う、新しいコミュニケーションの可能性のよう。
自己満足の“実験的”な映画が多い今、このメッセージをどうしたら受け手にきちんと伝わるか。それを考えて作られた稀少な作品。 人生の過剰について考えなくとも、単純に絵が好きな人も、言葉の力を信じる人も楽しめる。
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中沢志乃 ★★★
苦手のジャンルかもと思われる映画でしたが、実写にペイントを施したと聞いて見てみました。結果は予想以上に見てビックリ! 現実離れした揺れる映像、字幕翻訳も大変そうな哲学的なセリフの数々。不思議な浮遊感にとらわれつつも、セリフを追うのにかなり必死…。
「時間は実は流れてない」というシーンなど共感できるセリフもあり、興味深い内容とスタイルだと思います。 でもテーマが難しすぎて1回でクリアーできる人は少ないでしょう。半券を持っていくと2回目が1000円になるのが納得でした。
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岩崎真一 ★★☆
若い男が夢と現実の狭間で出会う人々の、哲学的な言葉に耳を傾けていき…というのが大筋の流れ。しかしこれというはっきりしたストーリーがなかったり、 実写に色を付けてアニメにしていたりといろいろ変わった試みが。実験映画賞とか未来の映画賞などを受賞してます。でも実験的ではあるけれど、
それだけに留まってしまっている感もあって、なんだったのかという消化不良の部分も。ラストも結局どうなったのか。 あと、予告編で使われていた曲が本編で一度も流れなかった(多分)のは納得いかない。耳に残ってたから楽しみにしていたんだけど…。
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