シネマの達人 ―最新映画星取表― バックナンバー一覧
【バックナンバー vol.3】

モンスーン・ウェディング
ザ・ロイヤル・ テネンバウムズ
ディナーラッシュ

第15回 東京国際映画祭 コンペティション部門授賞結果発表!
東京グランプリ・東京都知事賞
『ブロークン・ウィング』ニル・ベルグマン
優秀監督賞
カルロ・ローラ『バーグラーズ 最後の賭け』
優秀女優賞
ドナテッラ・フィノッキアーロ『アンジェラ』
優秀芸術貢献賞
シャオ・ダン(撮影)『恋人』
審査員特別賞
『ホテル・ハイビスカス』中江裕司
優秀脚本賞
ジェイソン・ゼノポルス『希望の大地』
優秀男優賞
グラハム・グリーン『荒野の絆』
アジア映画賞
『この翼で飛べたら』アソカ・ハンダガマ

ちなみに最終日のスニーク・プレビュー(覆面試写会)は、「ハリー・ポッターと秘密の部屋」でした。
星の点数 :  = 1 = 0.5
モンスーン・ウェディング

監督:ミラ・ナイール
出演:ナジルラディン・シャー、リレット・デュベイ
モンスーン・ウェディング

Nida タキグチ
 ★★★★
結婚というありがちな切り口ながら、家族愛という普遍的テーマにうまく昇華されていて、どんな人にも心にジンとくる魅力ある作品だろう。 不倫愛にとらわれる新婦の煩悩を優しく受容する新郎。しかし中心は彼らではなく、父親(ナシルディン・シャー)である。 いつも勇猛果敢にあたりを怒鳴り散らすのに、傷ついた時には「…お願いだ、私を支えてくれ…」と妻に泣きすがるシーンは感動的だ。 愛のために人間がいかに強くなれ、そしていかに弱くなってしまうかをまざまざと見せつける。 ウェディングプランナーのささやかな結婚式が対照的で、雨に濡れた痩身の子供など、現代インド社会の身分階級や貧困までも映し出しているのは、 さすがドキュメンタリー出身の監督である。終盤のモンスーンが、冷たいどころか生温かく感じられたのは気のせいか…。
山内彩子   ★★
まだインドには一度も行ったことがないので、20代のうちに行ってみなきゃ、と最近焦り始めた。 若いうちに、インド映画の持つ底知れぬパワーの源、あの混沌とした国と人々に触れてみたい。 この映画も、不倫の恋に悩む主人公が挙式直前に結婚をやめると言い出したり、主人公のいとこが親戚のおじさんに性的虐待を受けたトラウマを持っていたりと、 結構深刻な内容なのに、見終わるとなんだか元気が出てくる。“人生いろいろつらいこともあるけど、まあ歌って踊って楽しく生きよう” という能天気な気持ちになり、やっぱり落ち込んでるときにはインド映画が効くことを実感。
高野麻結子  ★★
見終わった後に全力でカレーが食べたくなる映画。通常の「インド映画」とは違っても、女性向けにこうすればウケるだろう、 という万国共通のお仕着せの視点がどうしても気になります。 ステレオタイプを避け、客層を広げるのであれば、「涙の数だけ幸せになれる」、「せつなくも爽やかな愛の物語」というキャッチコピーも含めてもう一度見直してほしい。 劇場での衣装展示やスタッフの方の演出は、今後の硬めの作品上映でも期待したいです。
古東久人   ★★★
最近、サンバを趣味にしている友人の結婚披露パーティに出席した。新郎新婦に招待 客、ウエイターまで踊り出す、映画さながらの楽しいパーティだった。この映画も父 親が娘のために豪華な結婚式を準備するところから始まり、ラストでは歌や踊りの賑 やかな宴が繰り広げられる。しかし、そこに至るまでに家族、親類縁者のドロドロと した愛憎関係が浮き彫りとなる。そんななか笑わせてくれたのがウエディング・プラ ンナーの男で、盛んにメイドを口説こうとするのだが、その不器用なアプローチが楽 しい。でも、ヴェネチアで金獅子賞を取るほどの映画?

ザ・ロイヤル・ テネンバウムズ

監督:ウェス・アンダーソン
出演:ジーン・ハックマン、アンジェリカ・ヒューストン

Nida タキグチ
 ★★
何となく観てしまうと、何となく終わってしまう映画である。個性的な天才一家の話なのだが、“家族の再生”がテーマと言いきれるほどシリアスに言及しているものでもない。 中途半端な感じは否めない。しかし、自他ともに認める“映画マニア”の監督が製作しただけあって、ディテールは微に入り細をうがつ。 ファッション、音楽、ファニチャーなど、サブカルチャーとしての映像美は評価に値する。ニューヨークが舞台のこの一家は、 現代資本主義社会がもたらす象徴的な冷めた家族。みなで笑いながら食卓を囲む幸福な家族の原風景を、対照的に登場させてもいいのではないのか。 もしくは「アダムス・ファミリー」のような圧倒的な個性とか。
山内彩子   ★★
映画の中でグウィネス・パルトロウが着ているラコステのワンピースが品切れになったりと、公開前から華やかな話題を振りまいていた割には、 公開後はそれほど人気が出なかった気がする。まあ、この映画は展開が突飛すぎて日本人には親近感を抱きにくい気が…。 「アメリカが抱える様々な問題を凝縮した映画」と評されているけど、果たしてこの映画を観て普通のアメリカ人の観客がそんな風に感じるのか疑問。 私には、インテリアや主人公達の着ている洋服などの細部が興味深かったので、映画館で観るよりビデオで観た方がもっと楽しめたかも。
高野麻結子  ★★
それはまるで中途半端なカゼ薬を飲んだときの、朦朧とした頭の中で続く物語のようでした。所々の断片が鮮やかなだけに、 技巧が先走ってそのまま終わりに辿り着いてしまい、残念。細部を描くだけでもなく、大枠をなぞるだけでもなく、 人を引き込む一大絵巻には何か秘密があるはずなのですが、それが何かはわかりません。 オープングタイトルのピンクの壁紙とネズミのバランスは純粋に素敵でした。それがすべてに行き渡ればよかった。
古東久人   ★★☆
20数年間別居していた父親が、家族再生を目指す物語。ジーン・ハックマンは病気で命がそう長くないという理由で家に戻ってくるが、実は嘘。 子供たちは小さい頃から実業・戯曲・テニスといった分野で活躍し、天才と呼ばれているが、それぞれに問題を抱え、気持ちはバラバラ。 そんな一家にはみだし親父が風を吹き込む。アメリカの伝統的シチュエーション・コメディだ。 常に赤いジャージを着ている長男親子が葬儀に参列するとき、黒のジャージになるといったさり気ないユーモアが楽しい。 ジャージにも喪服があったのか。ただ、マーゴを除いて子供たちの個性がそれほどストーリーに生かされていないのが残念。

ディナーラッシュ

監督:ボブ・ジラルディ
出演:ダニー・アイエロ、エドアルド・バレリーニ
ディナーラッシュ

Nida タキグチ
 ★★
めくるめく調理のリズム感と、賭博の焦燥感、殺人事件のスリル感。五感にうったえるスピード感あるヴィヴィッドな映画である。 一方で、ルイスのビジネスパートナーが殺されてしまう最初のシーンでは、スローな映像とゆったりした音楽で、 銃声がまるで遠くで鳴り響くような感覚に陥る。静と動、リアルとイメージを細かく操作している点は、さすがCM界で成功をおさめたジラルディ監督である。 ニューヨークの人気レストランを舞台に、伝統的料理とヌーベル・キュイジーヌの世代交代劇にも触れているのがタイムリーで興味深い。 辛口評論家に扮したサンドラ・バーンハードの毒のある演技は存在感がある。残念な点は、どの登場人物にも感情移入できずに終わってしまったこと。
山内彩子   ★★★
NYでは、人気のあるレストランのシェフを友達に持ち、予約が取れない店に顔パスで入れることが一番のステイタスなのだとか。 この映画の舞台となるイタリアンレストラン「ジジーノ」もそんな人気店。画面からは、はやっているレストランの熱気がリアルに伝わってくる。 もっとも、いたって庶民の私はこんな店にしょっちゅう行ってたら疲れそう、と思ってしまったけど。 ほとんどレストランの中で起きる出来事でストーリーが構成されているにも関わらず、 恋愛、友情、殺人などあらゆる要素がてんこ盛りでラストまで飽きさせないのは見事。 ただ、シェフ役の俳優エドアルド・バレリーニが、意外にもっさりした顔であまり魅力を感じられなかったのにはがっかりした。
高野麻結子  ★★★
トング(挟むやつ)を使って炒めると料理上手になれる(見える)のかもしれません。様々な事が起こり得る長い長い人生の、ある一夜が描かれる。 唐突に人が死んだりギャングが来たり、?という部分はあるにしても、それより何より、おいしいものは多少残すくらい頼んでたっぷり食事を楽しむべし、 という教えが胃袋に深く染み渡る。料理に演出は大事、それを生かす余裕と想像力はもっと大事と思わせる、軽くてもお腹いっぱいの物語。
古東久人   ★★★☆
良い意味で予想を覆された映画だった。単なるグルメ映画かと思ったら、さに非ず。店を乗っ取ろうとするマフィアがやって来て、殺人事件が起こってしまう。 しかし、殺人はこの映画にとって刺身のツマのようなもの。メインディッシュはやはりオーナー、シェフ、従業員、マフィア、 それに料理評論家も含む客たちの駆け引きだ。さまざまな人間が集まってくるレストランが舞台となる映画は、どうしても群像劇となるが、 そのへんの人物設定はうまく料理されていると言っていい。かつてカフェの厨房で体験したランチラッシュを思い出し、懐かしくなった。

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