Nida タキグチ ★★
めくるめく調理のリズム感と、賭博の焦燥感、殺人事件のスリル感。五感にうったえるスピード感あるヴィヴィッドな映画である。 一方で、ルイスのビジネスパートナーが殺されてしまう最初のシーンでは、スローな映像とゆったりした音楽で、
銃声がまるで遠くで鳴り響くような感覚に陥る。静と動、リアルとイメージを細かく操作している点は、さすがCM界で成功をおさめたジラルディ監督である。 ニューヨークの人気レストランを舞台に、伝統的料理とヌーベル・キュイジーヌの世代交代劇にも触れているのがタイムリーで興味深い。
辛口評論家に扮したサンドラ・バーンハードの毒のある演技は存在感がある。残念な点は、どの登場人物にも感情移入できずに終わってしまったこと。
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山内彩子 ★★★
NYでは、人気のあるレストランのシェフを友達に持ち、予約が取れない店に顔パスで入れることが一番のステイタスなのだとか。 この映画の舞台となるイタリアンレストラン「ジジーノ」もそんな人気店。画面からは、はやっているレストランの熱気がリアルに伝わってくる。
もっとも、いたって庶民の私はこんな店にしょっちゅう行ってたら疲れそう、と思ってしまったけど。 ほとんどレストランの中で起きる出来事でストーリーが構成されているにも関わらず、
恋愛、友情、殺人などあらゆる要素がてんこ盛りでラストまで飽きさせないのは見事。 ただ、シェフ役の俳優エドアルド・バレリーニが、意外にもっさりした顔であまり魅力を感じられなかったのにはがっかりした。
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高野麻結子 ★★★
トング(挟むやつ)を使って炒めると料理上手になれる(見える)のかもしれません。様々な事が起こり得る長い長い人生の、ある一夜が描かれる。 唐突に人が死んだりギャングが来たり、?という部分はあるにしても、それより何より、おいしいものは多少残すくらい頼んでたっぷり食事を楽しむべし、
という教えが胃袋に深く染み渡る。料理に演出は大事、それを生かす余裕と想像力はもっと大事と思わせる、軽くてもお腹いっぱいの物語。
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古東久人 ★★★☆
良い意味で予想を覆された映画だった。単なるグルメ映画かと思ったら、さに非ず。店を乗っ取ろうとするマフィアがやって来て、殺人事件が起こってしまう。 しかし、殺人はこの映画にとって刺身のツマのようなもの。メインディッシュはやはりオーナー、シェフ、従業員、マフィア、
それに料理評論家も含む客たちの駆け引きだ。さまざまな人間が集まってくるレストランが舞台となる映画は、どうしても群像劇となるが、 そのへんの人物設定はうまく料理されていると言っていい。かつてカフェの厨房で体験したランチラッシュを思い出し、懐かしくなった。
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