真夜中の虹

真夜中の虹(page 98/280)[真夜中の虹]

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概要:
98「あのー…」声をかけるのと同時にひょいとのぞき込んだ。その顔は今でもはっきり覚えている。目と鼻と口が、出でたらめ鱈目な場所に付いているのだ。....

98「あのー…」声をかけるのと同時にひょいとのぞき込んだ。その顔は今でもはっきり覚えている。目と鼻と口が、出でたらめ鱈目な場所に付いているのだ。それはちょうど、ピカソの絵を実写化したような感じだった。これは駄目だ……。そのまま足早にその前を通り過ぎ、角を曲がった瞬間、猛然とダッシュした。そこからどこをどう走っただろうか、気がついたら病院の外にいた。そのまま広尾の商店街に抜ける坂道を、まるで夢遊病者のようにふらふらと下り、やっとの思いで叔母の家にたどり着いた。疲れがどっと出て、玄関に倒れ込むと、奥から従兄弟がやってきた。「いま、病院から連絡があったよ」「えっ?」「爺ちゃん死んだって」そのまま脱力し、しばらくそこで倒れていた…。あのとき、廊下のベンチに坐っていた灰色の洋服の女性はいったい誰だったのだろうか…。