真夜中の虹(page 96/280)[真夜中の虹]
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概要:
96比須のマンションに住んでいた。倒れたときにはすでに隠居していたが、祖父は長い間、広尾で文房具屋を営んでいた。祖父の後は叔母夫婦が継ぎ、やがて僕がそこに勤めることになるのだが、その話はまた今度。夜遅く....
96比須のマンションに住んでいた。倒れたときにはすでに隠居していたが、祖父は長い間、広尾で文房具屋を営んでいた。祖父の後は叔母夫婦が継ぎ、やがて僕がそこに勤めることになるのだが、その話はまた今度。夜遅く、祖父のベッドの側で様子を見守っていると、件の熱海の人が付き添いの交代にやってきた。軽く挨拶を済ませ、祖父の顔をソッと撫でて病室を出ると、廊下の電気はすでに薄暗かった。夜中の病院は不気味だ。さてと、帰り道はどっちだったかな…。記憶をたどりながらエレベーター乗り場に向かった。寂しく暗い廊下を歩いていくと、明かりが消えた病室が無機質に並んでいる。んっ?なんだろう…、どの部屋からも明かりが漏れてこない…。よく見ると方向を示す掲示板もなく、ナースステーションがあるべき本来の場所には、がらんとした空間が広がっているだけだった。何かがおかしいと思いながらもそのまま進み、角が来たら曲がり、また進み、それを幾度も繰り返す。しかし、行けども行けども知らない場所へと出てしまう。もちろん誰とも擦すれ違わない。一旦、祖父の部屋に戻ろうと、いま来た道を逆戻りしてみるが、そこは来た道とはあきらかに何かが違っていた。もうどこをどう歩いているのかさっぱりわからず、正直焦ってきた。すると目の前に「下り」の階段があった。そう、「下り」しかない。「上り」の階段があるべ