真夜中の虹

真夜中の虹(page 95/280)[真夜中の虹]

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95見ると、そこには彼女の髪の毛が束で残っていた。演技と言うより、マジに感情を表現することで、自分の心の闇を外に吐き出すことが出来た。練馬の商店街を本物のピストルを手に疾走したり、中央線の中野と高円寺の....

95見ると、そこには彼女の髪の毛が束で残っていた。演技と言うより、マジに感情を表現することで、自分の心の闇を外に吐き出すことが出来た。練馬の商店街を本物のピストルを手に疾走したり、中央線の中野と高円寺の間を全力で走ったり、築地の魚売り場に頭から突っ込んだりもした。若くて何も知らなかったから、「表現」という囲いの中で思う存分暴れることができた。その甲斐あって、皆で祭りのように大騒ぎしながら作った短編モノクロ映画「シャッフル」は、ベルリン国際映画賞で賞を貰い、そして、「十階のモスキート」(崔洋一監督)の併映として全国でロードショウ公開された。映画の撮影も終わり、両親の一周忌がすぐそこに控えていたある夏の日、母方の叔母から電話が入った。祖父が危篤だというのだ。急いで広尾にある日赤病院に駆けつけると、祖父の意識はすでになく、透明な管を身体にたくさんつけ、ベッドに横たわっていた。久しぶりに会う祖父は、げっそりと乾ひから涸び、随分と小さく見えた。祖父は長身で体格も良く、顔立ちはロイ・ジェームズそっくり。それは外国人とのハーフだという噂があるくらい日本人離れしていて、女性には良くモテたという。性格は短気で怒りっぽく、それでいてカラカラとよく笑う、かなりの気分屋だった。最初の妻にも、その後に貰った妻にも先立たれ、この頃は熱海の芸者だった女性と一緒に恵