真夜中の虹(page 9/280)[真夜中の虹]
このページは、電子ブック 「真夜中の虹」 内の 9ページ の概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると、今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
9の日は解散になった。皆が帰った数時間後、父と母は心中した。正確に言えば父が母の首を絞め、そのあと紐で首を吊った。一度は紐が切れて失敗しているが、二度目には成功した。心中に関しては、父母の意見は同じで....
9の日は解散になった。皆が帰った数時間後、父と母は心中した。正確に言えば父が母の首を絞め、そのあと紐で首を吊った。一度は紐が切れて失敗しているが、二度目には成功した。心中に関しては、父母の意見は同じで、ふたりの遺書もあった。兄の説明をボンヤリと聞きながら、再びシンドイなぁ……と思っていると、やがて父方・母方の兄弟たちが駆けつけてきた。最初は口数が少なかった親戚も、そのうち、父母のどっちが先に死に誘ったかという話になった。どちらの親戚も自分たちに流れている血が可愛く、誘ったのは己に流れていない血の方だと言った。親戚というものがやっかいな存在だということを初めて知った。母の首に父の締めた指の跡が付いていると叔父が言ったので、死に顔は見なかった。父母と再会したのは、骨になったあとだった。骨は何の感情も持たずにソコにあり、片付け終わらない玩具のレゴのようにいろんなパーツが無造作に転がっていた。骨を拾うたびに悲しみの痛みが神経を伝わり、こちらの骨に響いてくる。その度に神経が軋み、身体が悲鳴をあげた。このときから、夏が嫌いになり、夏が来る度に精神がおかしくなった。何度も気が狂いそうになったが、本当に気が狂ってしまうことはなかった。人には「慣れる」という本能がある。どんな快楽にも「慣れ」があるように、どんな苦痛に