真夜中の虹(page 88/280)[真夜中の虹]
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88返事はすぐに返ってきた。「あきらめとらんよ、四十歳までにもう一度東京に行く、だからそれまで待っとってくれ」何を待つというのだ???マジなのか冗談なのかわからない言葉に、とうとう我慢できなくなり声に....
88返事はすぐに返ってきた。「あきらめとらんよ、四十歳までにもう一度東京に行く、だからそれまで待っとってくれ」何を待つというのだ???マジなのか冗談なのかわからない言葉に、とうとう我慢できなくなり声に出して笑った。なぜか、Hも笑った。なぜこいつも笑うのかわからなくて、よけいおかしくなった。そしたら、Hもゲラゲラと声を出して笑い始めた。笑いは止まらなくなり、その日は久しぶりに朝まで笑った。それから十年、彼が役者になることはなかった。宇多田ヒカルが流行り出した一九九九年、同じ劇団にいたOが四十歳を目前に、結婚することになった。その結婚式に、Hも呼ばれた。「お前の家に、式の前の日に泊めてくれ」久しぶりのHからの電話。式の前日に、我が家に姿を見せた彼は、以前よりも顔と身体にかなりの肉が付き、相変わらず着ているもののセンスが酷ひどかった。この頃、すでにC型肝炎を患っていた僕は、Oの結婚式で司会をすることになっていた。畏まった席が苦手な上に、初めての大役に、その日はかなり緊張していた。なんとかそれを和らげようと、Hを誘ってカラオケに行った。歌が上手なHだが、選曲は最悪だった。さだまさし、風、