真夜中の虹(page 87/280)[真夜中の虹]
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概要:
87Hが扉を開け、玄関に入った。いきなり大きなポスターが飛び込んできた。そこには、Hの不良時代の写真がポスター大に引き伸ばされ、誇らしげに貼ってあった。な、なんの意味があるのだろうか、そして、自分が元不良....
87Hが扉を開け、玄関に入った。いきなり大きなポスターが飛び込んできた。そこには、Hの不良時代の写真がポスター大に引き伸ばされ、誇らしげに貼ってあった。な、なんの意味があるのだろうか、そして、自分が元不良だったことを誰にアピールしたいのだろうか、すでにわけがわからない…。居間に進むと、天井から何かがぶら下がっていた。それは、インテリア用のカモメのモビールで、吊られた何匹かのカモメは、ひらひらとアホみたいに揺れていた。なんだか見てはいけないものを見たような気持ちになり、目線を外すと、そこにはピラミッドの形をした電話機が自慢げに置かれていた。なんとセンスがなく格好悪いインテリアなのだろうか…。客を笑わすためにわざとコーディネイトしているのかと思ったら、マジだった。もう、どうでもいい、こいつはやっぱり馬鹿だ。どうしようもない馬鹿なのだ。でも、そのおかげで、こいつはあの闇の中から逃げ出すことができたのも事実。都会での挫折…、そして帰郷…。きっと、彼の内側で何かが弾けたのだろう。日常の自分を歌舞くことで、破れた夢を忘れようとしたのかもしれない。そう思うと、少し切なくなった。その夜はふたりで並んで布団を敷いて寝た。布団に入り、それまで言い出せなかったことを口にした。「役者の夢はきれいサッパリ捨てたのか」