真夜中の虹

真夜中の虹(page 83/280)[真夜中の虹]

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概要:
83等でなければならない男と女の恋愛関係が、このふたりの場合は被害者と加害者にしか見えなかった。Hが惨めでかわいそうだった…。しかし、僕は何もしなかった。ふたりの間に入り、彼らの仲を裂こうともせず、お前....

83等でなければならない男と女の恋愛関係が、このふたりの場合は被害者と加害者にしか見えなかった。Hが惨めでかわいそうだった…。しかし、僕は何もしなかった。ふたりの間に入り、彼らの仲を裂こうともせず、お前ちょっとやめとけよと水を差すこともなかった。家庭持ちの僕にとって、ふたりに関わっていくほどの誠実さはすでになく、彼のことは面倒な出来事でしかなかったのだ。それから数時間、あたり障りのない会話をし、「お幸せに」と心にもない言葉をかけ、店を出た。「安くしとくわ」といったわりには、料金はバカみたいに高かった。友達からもボッタくるほど、きっと生活は困窮していたのだろう。いま思うと、僕のところに電話をかけてきたのは、彼のSOSだったのかもしれない。でも僕は逃げた。面倒で煩わしかったから、わざわざ助けようとはしなかった。やっと手に入れた自分の幸せを邪魔されたくなかったのだ。その後、このふたりがどうなったか少しだけ話しておく。Hはなかなか離婚に踏み切らない京子さんの態度に腹を立てた。しかし、収入の少ない彼に解決策があるわけもなく、彼女との爛ただれた愛欲に溺れていき、ふたりの間に流れる空気はゆっくりと歪んでいった。いつしか店も、人がまったく来なくなっていた。客の目当ては最初からママである京子さん