真夜中の虹(page 8/280)[真夜中の虹]
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概要:
8「ただいまー」努めて明るい声で家の中に入ったのには理由があった。母が取り乱していると思ったからだ。「母さんは?」家の中には、父の会社の人や母の知り合いが落ち着かなさそうに突っ立っ....
8「ただいまー」努めて明るい声で家の中に入ったのには理由があった。母が取り乱していると思ったからだ。「母さんは?」家の中には、父の会社の人や母の知り合いが落ち着かなさそうに突っ立っている。もう一度声を出す。「母さんは?」いちばん近くにいた人に問うが、目を合わせようともしない。ふと見ると、両親の寝室のドアが少しだけ開いていて、そこから嫌な空気が洩れている。フラッと寝室に入ると、そこにはふたつのベッドの上にふたつの遺体。仲良く並んで置かれていた。「なんだよ!ふたりかよ!!」わけがわからなくなり、いきなり暴れ出しそうになった僕の体をガシッと誰かが止めた。兄だった。兄は泣いていた。後ろ手でドアを閉め、僕をベッドに座らせた。部屋にいるのは、僕と兄と遺体になった両親の四人。そう、家族だけ。涙が止まらない兄は、手短にことの次第を僕に告げた。昨日の昼間、父がわき見運転で老婆を撥はね、老婆を死なせてしまった。心配した近所の人や会社の人が、夜遅くまで両親に付いていたが、ふたりともしっかりしていたので、安心してそ