真夜中の虹(page 75/280)[真夜中の虹]
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概要:
75都会の若者に負けるものかと、バンダナにサングラスという浜田省吾を気取った田舎者丸出しのHは、目をクルクルさせて都会の勢いに圧倒されていた。そして役者という個性的な世界に足を突っ込み始めてい....
75都会の若者に負けるものかと、バンダナにサングラスという浜田省吾を気取った田舎者丸出しのHは、目をクルクルさせて都会の勢いに圧倒されていた。そして役者という個性的な世界に足を突っ込み始めていた僕の話に興味を抱き、彼の自己顕示欲はムクムクと目を覚ました。大阪に帰る前の晩、話があるからと、Hは僕を江古田のスナックに誘った。覚えたてのソルティドッグをさも昔から知っている飲み物のようにカラカラとさせながら彼は言った。「オレ……向いてないような気がするんだわ、大阪…」なんだか、まるで青春映画のワンシーンを演じているようだが、言葉は訛なまっているし、バンダナは格好悪いし、おまけにナルシストっぽい雰囲気を出していてとても気持ち悪い。「向いてないも何も、まだ大阪に住み始めたばかりじゃないか」「向くか向かないかは最初でわかる。女と一緒だわ」言うほど、Hには女性経験は多くないはずだ。なんだろう、誰かの受け売りにしか聞こえない。「それって遠回しに、オレには東京が似合っているっていうことか?」「うん」えっ?こいつ頷うなずいたぞ!「何を根拠に……」「格好悪いんだわ、大阪」