真夜中の虹

真夜中の虹(page 7/280)[真夜中の虹]

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概要:
7「……お前のお父さんが、死んだ……」「なんで!」「…交通事故」交通事故……!またか…。僕は、前年に親友を交通事故で失っていた。ああ、シンドイなぁ…....

7「……お前のお父さんが、死んだ……」「なんで!」「…交通事故」交通事故……!またか…。僕は、前年に親友を交通事故で失っていた。ああ、シンドイなぁ…。そんな言葉を小さく吐き捨て、真夏の日差しの中を芯のない向日葵のようにユラユラしながら江古田駅まで歩いた。駅前にある公衆電話の箱に入ると、そこは蒸し風呂のようだった。あっという間に握った十円玉が汗で濡れていく。当時入っていた劇団の先輩に、しばらく実家に帰ることを告げ、新幹線で実家のある名古屋に向かった。夏休みで満員の車内から弾かれ、デッキで外を眺めていたら、なぜか松山千春の「恋」という歌が頭の中を繰り返し流れていた。煙草を吸う指に涙があたる。悲しみは湧いていないのに、なぜか涙が流れる……。父の死をうまく受け止められずに、泣くことしかできない自分……。母は、きっと辛いだろうな……。