真夜中の虹

真夜中の虹(page 67/280)[真夜中の虹]

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67た。甲子園でいえば準優勝。みんなの苦労が報われた。先輩たちは優勝を狙っていたので悔しそうだったが、新入部員の僕たちは準優勝でも大満足だった。このときの高校演劇の公演が、ある意味宗教のような、集団幻想....

67た。甲子園でいえば準優勝。みんなの苦労が報われた。先輩たちは優勝を狙っていたので悔しそうだったが、新入部員の僕たちは準優勝でも大満足だった。このときの高校演劇の公演が、ある意味宗教のような、集団幻想の心地良さを僕に植え付けた。皆で一から「もの」を作り、それを完成まで持っていく充足感は、これまで味わったことのないものだった。これをきっかけに、僕は日大芸術学部演劇学科に入学する目標を持ち、映画とは別の芝居という表現に興味を深めていった。天井桟敷の寺山修司、状況劇場の唐十郎、つかこうへい等々、演劇の神様と呼ばれる人々を本や雑誌で知った。劇団状況劇場の根津甚八がNHKの大河ドラマで石川五右衞門を演じ、まだ無名だった小林薫は赤テントで牙を剥き、毒を吐き散らしていた。東京キッドブラザースやミスタースリムカンパニーというロック・ミュージカルに接したのもこの頃だった。他にも東京ヴォードヴィルショー、老舗の未来劇場等々、面白そうな芝居があればせっせと足を運んだ。遠山先輩主宰の劇団GAYAはまだ無名だったが、不良を主人公とした、この劇団の芝居が作り出す不完全な人間の生き方は、自分を重ね合わせるのにちょうど良かった。しかし、いかんせん住んでいるのは大きな田舎と呼ばれる名古屋。観ることのできる演劇に