真夜中の虹

真夜中の虹(page 63/280)[真夜中の虹]

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63涙が再びこぼれ、なかなか止まってくれなかった。それからというもの、Sの死が心を痛めつけ、前に進めなくなった。日常は残酷だ。誰が死のうが、何が起きようが否応なくやってくる。しかし、そのおかげで、人間は....

63涙が再びこぼれ、なかなか止まってくれなかった。それからというもの、Sの死が心を痛めつけ、前に進めなくなった。日常は残酷だ。誰が死のうが、何が起きようが否応なくやってくる。しかし、そのおかげで、人間はバランスを取ることを学ぶのも事実。だから、こうやっていまだに自殺することなく生きることができている。でも、それに気が付くのはもっと大人になってからで、この頃はまだ「死」というものに、好き勝手に振り回されていた。僕は、毎日Sのことばかり考えていた。そんなことをしたって、ちっとも心は癒えないのに、そうするしかなかった。夏が来た。高校最後の夏休み。なのにほとんどどこにも行かなかった。ただひとつ、Sが生きていれば一緒に行ったはずの矢沢永吉の後楽園コンサートにだけは行った。だけど、もう心の底から湧き上がってくるものは何もなかった。そのコンサートを最後に矢沢からは卒業し、「我が青春」はゆっくり幕を閉じた。そして、Sと語った将来に向け、それまで手を付けることのなかった受験勉強というものに、ぼんやりと取りかかることにした。しかし、高校三年の秋から始めた勉強は、しょせん付け焼き刃にしかならなかった。受験したほとんどの大学は、見事に不合格。発表を残すのは、受験した大学の中では一番ランクの高い大学だけだった。そんなところ、受かるわけがない。浪人するか、東京に出て働くか、早く