真夜中の虹

真夜中の虹(page 58/280)[真夜中の虹]

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58キャロル(矢沢永吉が元いたバンドの名前)の『暴力青春』と寺山修司の『家出のすすめ』をしのばせ、深夜の夜行に乗った。行き先は花の都、東京。と言えば格好はつくけど……。実際は昼間の新幹線に乗っての二時間の....

58キャロル(矢沢永吉が元いたバンドの名前)の『暴力青春』と寺山修司の『家出のすすめ』をしのばせ、深夜の夜行に乗った。行き先は花の都、東京。と言えば格好はつくけど……。実際は昼間の新幹線に乗っての二時間の移動。それはほとんど目的のない、軟弱な家出だった。東京駅には、事前に連絡しておいたAさんが迎えに来てくれた。そのまま高田馬場の彼女のアパートに行き、お泊まり。次の日はさっそく演劇鑑賞。当時まだ無名だった東京ヴォードヴィルショーの芝居や、紀伊国屋ホールで上演していた小川真由美と木村功の芝居「二人でシーソー」を観た。名古屋で芝居を観るのと違って、東京で芝居を観たというだけで自分が文化人の端くれにでもなった気がした。都会とセックスと演劇、現実逃避の日々は夢のように過ぎ、きっちり一週間で名古屋に帰った。さぁ、何かが変わるぞ、何かが…、という期待を胸に久しぶりに学校に行くと、自分も、周りも、目に映る風景も、やっぱり何も変わっていなかった。そう、自分自身が変わらなければ、どこに行こうと、どこにいようと、何も変わらないし、変わるわけがない。しかし、田舎の高校生にそんな理屈はわからなかった。オレ、こんなんでいいのかなぁ……。学校からの帰り道、Sの自転車の荷台に乗りながら、それまで訊けなかったことを尋ねてみた。「お前将来どうする?」