真夜中の虹(page 34/280)[真夜中の虹]
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34前置きが長くなった。久しぶりに本題に入る。一九七三年、僕は私立の中学を受験することになった。本当は近所の公立の中学に行くつもりでいたのに、同じ学校の普通科高校(この学校、エスカレーター式で、高校から....
34前置きが長くなった。久しぶりに本題に入る。一九七三年、僕は私立の中学を受験することになった。本当は近所の公立の中学に行くつもりでいたのに、同じ学校の普通科高校(この学校、エスカレーター式で、高校から入るのはとても難しい)を兄が受験するのと、姉の闘病中に何もしてやれなかったから、せめて受験だけでもさせてあげたいという両親のたっての願いから、小学校六年の二学期、突然そういう成り行きになった。小学校の成績は中の中。急に決まったことなので、もちろん受験勉強などすることなく、また親にとっては合否なんかより、とりあえず受験さえさせれば、子供に対する負い目はチャラになり、親の役目は果たせると思っている。だから、誰も合格するとは思っていなかった。しかし、そんな本人や周りの予想とはうらはらに、僕は名門私立中学に見事合格。反対に誰もが合格すると信じていた秀才の兄が不合格。僕は校則に従って頭を丸めることになり、兄は同じ学校の商学部に入学した。この名門私立中学に通う三年間が、中島家にとって何も起こらない凪なぎのような時間になった。何も起こらない…、それはある意味シアワセな時間であると同時に不気味な時間でもあった。中学の三年間で印象に残っていることは、柔道部の主将をつとめたこと、マスターベーションを覚えたこと、密かに好きな女の子ができたこと、映画に出会ったこと(中二の頃は年間