真夜中の虹(page 32/280)[真夜中の虹]
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概要:
32第六話「矛盾」先日、下北沢の小さな劇場でク・ナウカという劇団の「欲望という名の電車」という芝居を観た。この作品はアメリカの作家、テネシー・ウィリアムズの傑作で一九五一年にエリア・カザン監督、ビビア....
32第六話「矛盾」先日、下北沢の小さな劇場でク・ナウカという劇団の「欲望という名の電車」という芝居を観た。この作品はアメリカの作家、テネシー・ウィリアムズの傑作で一九五一年にエリア・カザン監督、ビビアン・リー、マーロン・ブランド主演で映画化もされている。日本の演劇シーンでも何度も上演され、主演のブランチという女性の役を杉村春子、岸田今日子、栗原小巻、樋口可南子、大竹しのぶという日本の名女優たちが演じた。今回のブランチ役を演じたのは美加理。これまでで最高のブランチを見せてくれた。「《欲望》という名の電車に乗って、《墓場》という電車に乗り換えて、六つ目の角で降りるように言われたのだけど、《極楽》というところで」というセリフで始まるこの劇は、ブランチという女性のかつての栄光と精神の崩壊を描いた残酷物語で、作品全体が滅びの美学で覆われている。作家のテネシー・ウィリアムズは分裂症気味の同性愛者だと言われている。よく男の演出家や役者から、「シェークスピアはわかるけど、テネシー・ウィリアムズはよくわからん」という言葉を聞く。それはきっとテネシー・ウィリアムズが女性にありがちな分裂症気質なのに対