真夜中の虹(page 277/280)[真夜中の虹]
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概要:
277いうものが頭の中からスッポリ消えていて、何が何やらわからずに、ただ混乱していた。それでも自分があの世から帰還したばかりの状態だということは、なんとなく判った。生死を彷さまよ徨ったおかげかどうか知ら....
277いうものが頭の中からスッポリ消えていて、何が何やらわからずに、ただ混乱していた。それでも自分があの世から帰還したばかりの状態だということは、なんとなく判った。生死を彷さまよ徨ったおかげかどうか知らないが、いつの間にか気がついたら死ぬのが怖くなくなっていた。この世と別れる寂しさはもちろんあるけれど、僕が感じた死の周辺は、すっぽりと無に覆われていて、別に怖いものではなかった。今回もあのまま死んでいたら、それでおしまい。何もない世界へ旅立っていた。それがわかっただけでも、いい体験だったと思う。これからはさっぱり生きていこう。そう決めたらまたひとつ、毒気が抜けた。そんなわけで、昨年の二〇一一年は病気で始まった。年の前半はリハビリに費やし、途中でナレーションの仕事を一本した他は、秋から週一回の大学の非常勤講師の仕事をこなしただけで一年が終わった。それだけしかしていないし、それだけしかできなかった。今日は二〇一二年一月三日。箱根駅伝の復路が終わった。総合優勝は山の登りの神、柏原竜二のいる東洋大学の優勝だった。神奈川大学の選手が鶴見中継所手前で足がもつれ、二度も転んだにも関わらず、それでも繰り上げスタートぎりぎりで襷たすきを繋いだ。印象に残る一場面だっ