真夜中の虹

真夜中の虹(page 276/280)[真夜中の虹]

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276そういえば、集中治療室に入っている間にこんな夢を見た。それは真冬の朝早い時間だった。下北沢に向かう道を少しだけ急ぎ足で歩いていた。しかし、頭の中では下北沢に向かう道なのに、そこは何かが少しだけ....

276そういえば、集中治療室に入っている間にこんな夢を見た。それは真冬の朝早い時間だった。下北沢に向かう道を少しだけ急ぎ足で歩いていた。しかし、頭の中では下北沢に向かう道なのに、そこは何かが少しだけ違っていた。住宅街なのに人の気配がまったくなく、風景の中に生き物だけが削除されてる感じだった。下北沢に向かうその道を行くと、なぜか池の畔に着いた。その池は知らない池なのに、夢の中では以前来たことのある池だった。池のそばには喫茶店があり、そこにもまた人はいなかった。そんな場所でひとりぼんやりしていると、場面は下北沢に向かう道に逆戻りし、再び誰もいない道を最初から歩き始める…。そんな夢を、意識が混濁する頭の中で見ていた。「中島さーん」誰かに呼ばれ、十二日間に渡る深い眠りから覚めた。朦もうろう朧としたまま瞼を開けると、側に看護師さんが立っていた。その人が妙に素っ気なく、「中島さん、ここがどこかわかりますか?」と言った。馬鹿馬鹿しい、ここがどこか訊きたいのはこっちのほうだ。そう言おうとしたけど口が動かなかった。神経がおかしくなっていて身体が言うことを聞いてくれない。それに加え、記憶と