真夜中の虹(page 275/280)[真夜中の虹]
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概要:
275退院直後は下半身の痺れにも悩まされた。痺れが酷くて、歩く気にもならない。下手をすると車椅子の生活になるかもしれないと威かされ、毎日一万歩以上の散歩を強いられた。今日は下北沢まで、明日は新宿までと徐....
275退院直後は下半身の痺れにも悩まされた。痺れが酷くて、歩く気にもならない。下手をすると車椅子の生活になるかもしれないと威かされ、毎日一万歩以上の散歩を強いられた。今日は下北沢まで、明日は新宿までと徐々に歩く距離を伸ばし、気がついたらお茶の水の順天堂まで往復できるようになっていた。歩いたおかげで痺れは随分と良くなり、それに加え、身体中の毒気が徐々に抜け落ち、散らかっていた脳の中が随分と整理がつくようになった。自分のやりたいこと、やりたくないこと。それはいったい何なのか。生きていくにはどうしたらいいのか。最終的にどこに落ち着きたいのか。黙々と歩きながら考えをまとめていると、いつの間にか身も心もシンプルになった。持ち物の整理も始めた。いらないものは人にあげたり、寄付したり、残りは思い切って捨てた。五百件以上あった携帯電話のアドレスも、かなりの件数を削除し、いまは七十件くらいまでになった。とにかく身軽にしたかった。人間は本当にいつ死ぬかわからない。死ぬときは身軽の方が良い。なので、少しずつでも物や人に対する執着をなくしていきたいと、会っておきたい人には会い、これまでのお礼と別れを遠回しに告げた。それは、いつ逝ってもいい準備だった。正直言って医者から言われている、次は本当にやばいぞと。今度三十九度を超える熱が出たら、直ちに入院、即集中治療室だそうだ。