真夜中の虹

真夜中の虹(page 274/280)[真夜中の虹]

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274なかった。それでも日を追うごとに少しずつ記憶は戻り、普通に生活ができるぐらいまでにはなった。しかし、いまだに戻らない記憶もたくさんある。それでも覚えていないものは仕方がない。思い出せない出来事は未....

274なかった。それでも日を追うごとに少しずつ記憶は戻り、普通に生活ができるぐらいまでにはなった。しかし、いまだに戻らない記憶もたくさんある。それでも覚えていないものは仕方がない。思い出せない出来事は未経験として処理するしかないし、思い出せない人物は知らない人として扱うしかない。先日も新宿を歩いているときに、見知らぬ人から挨拶をされた。挨拶してきたからには、きっと知り合いなのだろうと、頭の中をひっくり返して思い出そうとするが、どうしても思い出せない。いくら必死になっても、わからないものはわからないので、ごめんなさい思い出せません、と言って逃げるように立ち去り、数十メートル過ぎたあたりでソッと振り返った。すると、その人は不可解な感じのまま、取り残されたようにそこに立っていた。なんだか悪いことをした。医者が言うには、脳のデータは残っているのだけれど、それを取り出しに行く作業の仕方を忘れているのだという。正直いって、文章を書く作業も思い出せなかった。頭のどこをどうやって使って文章を書けばいいのかさっぱりわからず、退院後もロゼッタストーンの連載を再開できずにいた。今回、電子書籍化する話を戴いて、昔の文章の手直しを始めたのが、久しぶりの書く作業となった。自信がないまま、長い時間かけて直しを行い、やっと「あとがき」までたどり着くことができた。書く作業も少しは思い出せたようだ。