真夜中の虹(page 268/280)[真夜中の虹]
このページは、電子ブック 「真夜中の虹」 内の 268ページ の概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると、今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
268その言葉に思わず身体が強ばる。三浦さんに続いて篠木さんまでも…。篠木さんは、僕が三浦さんに誘われて出演をした番組のディレクターだった。よくわからない業界での仕事。右も左もわからない僕を励まし、いろ....
268その言葉に思わず身体が強ばる。三浦さんに続いて篠木さんまでも…。篠木さんは、僕が三浦さんに誘われて出演をした番組のディレクターだった。よくわからない業界での仕事。右も左もわからない僕を励まし、いろいろと面倒をみてくれた。そういえば、仕事を続けていく自信をなくしかけたとき、情けない手紙を出したことがあった。「僕はもう生きていくのが嫌になりました。そのうち、どこかへ雲隠れしようと思います…」篠木さんは、そんな僕を見捨てずに、いつも気にかけてくれた。こんな情けない男のことを心配してくれる人がこの世の中にいる…。そのことだけで、生きていく勇気になった。僕がC型肝炎になったときも、とにかく身体を大事に長生きしなさい、と笑って肩を叩いてくれた。いつもニコニコとして、お酒が好きだった篠木さん。誠実に人と付き合ってきた篠木さん。人から嫌われることのなかった篠木さん。しかし、いまはもういない…。極度の葬式嫌いが、篠木さんのときには最期の挨拶に出かけた。お棺に入れられた篠木さんの顔は、とても穏やかだった。篠木さん…、僕はこの先どうやって生きていけばいいのでしょうか…。そう尋ねてみても返事は返ってこない。でもきっと、篠木さんならこう言うだろう。「生きていくしかないのだよ…」その昔、篠木さんが僕にくれた本がある。それは『野垂れ死に考』という本だった。河原乞