真夜中の虹

真夜中の虹(page 267/280)[真夜中の虹]

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267第五二話「覚悟」三浦さんが亡くなった年の六月、僕は結婚をした。籍なんかどうでもいいと思っていたし、一度失敗しているのでいまさらという気持ちもあったけれど、彼女の母親に泣きつかれ、知り合って....

267第五二話「覚悟」三浦さんが亡くなった年の六月、僕は結婚をした。籍なんかどうでもいいと思っていたし、一度失敗しているのでいまさらという気持ちもあったけれど、彼女の母親に泣きつかれ、知り合ってから十一年目の六月に籍を入れた。もちろん式も挙げず、自分からは誰にも言わなかった。人に訊かれたときにだけ、そういえば結婚しましたとなんとなく言う程度だった。しばらくして、まず長女が東京の高校に入るために上京。一緒に暮らし始めた。追って次女も高校入学のために上京し、我が家は四人家族になった。娘ふたりとの同居は、久しぶりに訪れた嬉しい出来事だった。家族に囲まれての生活は闘病生活を随分と和らげてくれた。しかし妻にとっては血のつながらない娘たちとの同居は大変だったようで、夜な夜な公園でひとり泣いていたという。きっと自分だけが除け者のように感じてしまったのだろう。可愛そうなことをしたと思う。ある日のことだった。下北沢を散歩している僕の携帯が鳴った。発信者はマネージャーの中村。何だろうと思って電話に出ると、彼の声が飛び込んできた。「中島さん!篠木さんが亡くなりました!」