真夜中の虹

真夜中の虹(page 259/280)[真夜中の虹]

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259ある日のことだった。玄関から居間に入ったら、妻と外国人が抱き合って寝ていた。緊張した。心臓がドクドクいった。なんだか悲しくなった。そこはかつて家族みんなで楽しく過ごした居間じゃないか…。何もそんな....

259ある日のことだった。玄関から居間に入ったら、妻と外国人が抱き合って寝ていた。緊張した。心臓がドクドクいった。なんだか悲しくなった。そこはかつて家族みんなで楽しく過ごした居間じゃないか…。何もそんなところで…。女の残酷さを初めて知り、離婚を真剣に考え始めた。それから数カ月経った。とうとう離婚を決める日がやってきた。妻が子供を身籠もったのだ。子供の父親は件の外国人。離婚しなければ、生まれてくる子供は、戸籍上は僕の子供ということになってしまう。別にそれはそれでもいいと思ったが、妻の方がどうしても離婚したいと言うので、それならそうしますかと、一九九四年二月十六日、離婚をした。離婚届に判を押し、十一年の結婚生活はあっさりと終わった。離婚したからといっても、日々の生活はあまり変わらなかった。僕は相変わらず、元妻や子供のいる家に出入りをしていたし、外国人は我がもの顔で家に居座っていた。家を妻にあげるとはひと言も言ってないのに、外国人が我がもの顔に振る舞い、息子に対し父親然と叱ったりしている。外国人には悪気はないのかもしれないが、何も言わない元妻にも腹が立ち、家と子供たちを滅茶滅茶にしていくふたりに対し、殺意を覚えた。そんな僕を救ってくれたのは表現だった。演出という表現に関わることで、どろどろとした現実を作品作りの肥やしにすることができた。そして、この演出との出会いが、その後の人生に大きく影響していくことになるのだった。