真夜中の虹(page 244/280)[真夜中の虹]
このページは、電子ブック 「真夜中の虹」 内の 244ページ の概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると、今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
244ドライとカメリハは台詞が完全に入っていないので、台本を持ってやった。ドライとカメリハを台本片手に演じたのは、この世界に入って初めてだった。本番が終わり、モニターチェックが始まった。言い間違えたのは....
244ドライとカメリハは台詞が完全に入っていないので、台本を持ってやった。ドライとカメリハを台本片手に演じたのは、この世界に入って初めてだった。本番が終わり、モニターチェックが始まった。言い間違えたのは二カ所。もう一回やるんだろうなぁ……と思ったら、間違えたところだけ部分的に撮り直してくれた。夕食休憩に入った。休憩に入ってもホッとする余裕はなかった。関門の長台詞のシーンはもうひとつ残っていた。ふたつの長台詞のうち、そっちの方が圧倒的に長いのだ。そのシーンが始まる予定時刻は午後十一時半。ふと楽屋の窓から外を見ると、凄い勢いで雪が降っている。やばい…、頭がクラクラしてきた…。疲れがピークを過ぎ、身体が悲鳴をあげている。ああ、どうしよう…気を失いそうだ、とにかく今日だけはなんとか乗り切らないと…。そのまま暴力的な睡魔に襲われ、呼びに来たADに起こされるまで、死んだように眠ってしまった。最後のシーンがやってきた。このシーン、ほとんど僕ひとりで喋っている。カメラが回った。しかし、あんなに練習したのに、全然できない…。台詞が出てくるも何も、舌がまったく言うことを利いてくれない。口の中でモッタリと纏まとわり付き、呂律が回らず、まるで記憶障害に言語障害が加わったような喋りだ。もう駄目だ、誰か助けて欲しい。しかし、役者という仕事は誰か他の人に代わってもらうわ