真夜中の虹(page 238/280)[真夜中の虹]
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238第四六話「限界」正月は嫌いだ。この先、もし自殺をすることがあったなら、その日はきっとクリスマスから正月にかけての、寒いこの時期に違いない。世の中が賑わうこの季節、僕には居場所がない....
238第四六話「限界」正月は嫌いだ。この先、もし自殺をすることがあったなら、その日はきっとクリスマスから正月にかけての、寒いこの時期に違いない。世の中が賑わうこの季節、僕には居場所がない。何をどう振る舞っていいのかわからない。心の置き場を失い、ただ時が過ぎるのを待つしかない。今年もその季節がやってきた。去年の暮れ、二〇〇四年の十二月、あるテレビドラマに出演した。そのドラマの撮影は、長野の温泉地から始まった。撮影の前日、他の出演者の人たちと一緒にワンボックス車に乗り、ロケ現場の旅館に到着した。長時間の車移動で腰がすごく痛い。腰をさすりながら旅館に入ると、そこは高級旅館。一泊なんと三万八千円で、玄関の奥には能舞台まである。うわー、こんなところに泊まるのかと一瞬喜んだものの、ここはあくまでもロケ現場。宿泊場所は別の場所だった。豪華旅館から歩いて数十メートル行くと、宿泊場所になる旅館があった。一泊三万八千円を見たあとだけに、ひどくみすぼらしく映り、残念な気持ちになる。おまけに部屋にトイレがなく、浴場に露天風呂もなかった。