真夜中の虹(page 231/280)[真夜中の虹]
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概要:
231第四五話「高熱」二〇〇三年九月、久しぶりに舞台に立った。この芝居は始まってから終わるまでの一時間半、ずっと暗闇が続く、ちょっと変わった舞台だった。ふつう芝居というのは....
231第四五話「高熱」二〇〇三年九月、久しぶりに舞台に立った。この芝居は始まってから終わるまでの一時間半、ずっと暗闇が続く、ちょっと変わった舞台だった。ふつう芝居というのは、目で見るもの。しかしこの舞台は、役者の台詞と気配だけで進んでいく。客も役者もお互いまったく見えない。五感をより一層研ぎすませて演じなければ、役者の存在が客には伝わらない。これがとても疲れる。全身ボロボロになり、公演終了後は一週間寝込んだ。もう二度とこんな舞台はやりたくない、というより舞台そのものが、すでに肝炎・橋本病・ヘルニア持ちの身体には辛い。芝居に出るのはこれで終わりにしようとはっきり決めた。しかし、公演が終わった三カ月後、演出家から電話があった。「来年再演をします、そして神戸と名古屋の地方公演もやります。中島さんが必要なのです。ひとつよろしくお願いします」うーん…必要かぁ…。役者はそのひと言にとても弱い。仕方ない、来年もやりますか。舞台俳優の寿命が一年延びた。