真夜中の虹(page 220/280)[真夜中の虹]
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概要:
220前、劇団をやめるときと理由が同じなのが悲しかった。組織というものは結局、ひとりの支配者が私物化していく。それが信仰という神事の世界でもそうなのだからたちが悪い。信仰というものは元来とても個人的なも....
220前、劇団をやめるときと理由が同じなのが悲しかった。組織というものは結局、ひとりの支配者が私物化していく。それが信仰という神事の世界でもそうなのだからたちが悪い。信仰というものは元来とても個人的なもので、神様と自分との間には何人も入れない。なのに、気が付くとそこに人間が入り込み、人の心の支配を始める。支配される側の人間は支配者にすべてを依存し、支配者は他者をコントロールしていないと安心できなくなり、ある種の共依存がそこに成立する。僕は、もう誰かに依存するのはこりごりだった。真冬の深夜のお山は冷え込みが厳しく、ものすごく寒い。加えて、昨日からの雨が止むことなく降り続いている。まるで掟を破って深夜のお山に無断で入り込んでいる僕たちを、神様が嘆いているようだった。山の中腹にさしかかった。昼間とはちがい、深夜の登りは疲労が激しい。僕の足も限界に近づき、途中で何度も立ち止まっては息をついた。何回目の休憩だったろうか。いきなり目めまい眩に襲われ、立っていられなくなって、その場にしゃがみ込んだ。他の人たちには先に行ってもらい、少しの間、その場で休むことにした。うなだれた首の辺りに、冷たい雨が落ちてくる。ああ、疚やましい自分の心がここにある…。若先生のことはすでに信じていない…。なのに、こうやって尻にくっついている…。なぜだろう…。それ