真夜中の虹(page 22/280)[真夜中の虹]
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22だそうだ。うーん、相当嫌な性格だ…。僕が初めて女性の絶叫に恐怖を覚えたのは一九七〇年、十歳のとき。当時、僕には学年で八つ上の姉がいた。名前は直美。その姉が高校一年のとき、インフルエンザの予防接種....
22だそうだ。うーん、相当嫌な性格だ…。僕が初めて女性の絶叫に恐怖を覚えたのは一九七〇年、十歳のとき。当時、僕には学年で八つ上の姉がいた。名前は直美。その姉が高校一年のとき、インフルエンザの予防接種をキッカケに高熱を発し、そのまま熱が下がらなくなった。ただの風邪でしょう、そう医者に言われ、処方された抗生物質を姉は飲み続けた。そのうち身体中に紫色の斑点ができ、夜中に独りごとを言うようになり、やがて、おねしょまでするようになった。姉の寝ている部屋は、いつもおしっこ臭く、通るのが嫌だったのを覚えている。なんだかこれはただの病気じゃないなぁ……。家族の誰もがそう思い始めたある日。学校から帰ると、風呂場から母のすすり泣く声が聞こえてきた。どうしたのだろうと近寄ると、不幸の空気がそこから洩れていた。恐る恐る中をのぞくと、そこには風呂桶をゴシゴシ拭く母の姿があった。目から涙をポロポロこぼし、何かに取り憑かれたように拭いている。しかし、よく見ると、雑巾が濡れていない。カラ拭きだ。なぜに風呂桶をカラ拭き……。「どうしたの」恐る恐る声をかけた。「三島由紀夫が死んだの……」「えっ、だあれ?それ?」