真夜中の虹

真夜中の虹(page 219/280)[真夜中の虹]

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219悲しい生き物だと思った。不思議な体験は他にもある。ちょうど同じ年の大晦日の夜。僕がちょうど、この神道系の講を抜けるかどうかという岐路に立っていた頃だった。場所は深夜の三輪山。深夜の三輪山は神様の時....

219悲しい生き物だと思った。不思議な体験は他にもある。ちょうど同じ年の大晦日の夜。僕がちょうど、この神道系の講を抜けるかどうかという岐路に立っていた頃だった。場所は深夜の三輪山。深夜の三輪山は神様の時間、人間は絶対に入ってはならない。しかし、その禁を破って、大晦日から新年に変わる時間、僕たちは三輪山に入った。人に見つからないよう、神社の裏手側にある巳(蛇)様がいらっしゃると言われる禁足地から、深夜の三輪山に足を踏み入れる。人数は五人。天気は雨。真っ暗な山の中を懐中電灯も点けず、ゆっくりと足を進めていくと、闇の気配が身体に重くのしかかってきた。夜のお山の雰囲気は、昼間のそれとはまったく逆だった。昼間はとてもクリアーで清々しい山の中だが、夜は闇が深く、底なしに恐ろしい場所に姿を変える。人間の心の闇が巨大な化け物となり、いまにも自分たちを食い尽くそうと様子をうかがっている…、そんな気も狂わんばかりの恐怖がそこにあった。夜のお山は神が支配するという。ここが夕方五時以降は禁足地になるという理由が、このときよくわかった。暗闇というのは人の心をひどく不安にさせる。僕は緊張しながら若先生の後ろを歩いた。僕は彼を裏切り、講をやめようとしている。理由は、組織というものが嫌になったから。以