真夜中の虹(page 210/280)[真夜中の虹]
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210こを支配している…。ユリちゃんに目を移すと、唇を噛みしめ、下を向いていた。その横顔はとても悲しげだった。....
210こを支配している…。ユリちゃんに目を移すと、唇を噛みしめ、下を向いていた。その横顔はとても悲しげだった。どれくらい時間が経っただろうか。「帰ろうか」彼女がポツリと言い、僕たちは磐座をあとにした。迷うことを覚悟していた帰りの道は、不思議とすぐに見慣れた場所に出ることができ、無事下山できた。磐座群でのことは、自然とふたりの秘密になり、それ以来、彼女とは口を利いていない。普段は主婦でお母さんのユリちゃん。日常の生活の中で、彼女に憑いていた万葉歌人はどうしているのだろうか…。あの日、彼女と感じた万葉の風。その風は、二度と吹くことはなかった。