真夜中の虹

真夜中の虹(page 208/280)[真夜中の虹]

電子ブックを開く

このページは、電子ブック 「真夜中の虹」 内の 208ページ の概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると、今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
208く、その音がいくつか連なって旋律のようなものになっていく。それが日本語なのか、違うのかもはっきりわからない。かといって嫌な感じはなく、そこに流れ....

208く、その音がいくつか連なって旋律のようなものになっていく。それが日本語なのか、違うのかもはっきりわからない。かといって嫌な感じはなく、そこに流れる透明な空気にうまく溶け込み、古代の場所に違和感なくマッチしていた。ある人がその歌声を録音して古代史の研究家に聴かせてみたら、彼女が奏でていたのは古代の万葉言葉だという。万葉時代の歌人が時空を飛び越え、彼女の身体に舞い降りた。時を越えた万葉の歌人が現世で蘇り、恋歌を奏でる。なんとロマンチックなことだろう。それは、奥津磐座という祭祀場で長い鎮魂のお参りをしていたときだった。彼女が突然超音波のような高い音を発し、猛スピードで獣道を裸足で下りはじめた。「追いかけて!」と誰かが言うよりも早く、靴を履いていた僕はあとを追った。しかし裸足のユリちゃんの早いこと、足に自信のある僕でもなかなか追いつかない。