真夜中の虹

真夜中の虹(page 207/280)[真夜中の虹]

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207れた気になる。大いなる錯覚と依存がたしかにそこにあった。しかし、同時に理屈では解明できない不思議な何かもそこにはあった。三輪山には、相変わらず月一で登っていた。この頃になると教祖気取りの若先生が、....

207れた気になる。大いなる錯覚と依存がたしかにそこにあった。しかし、同時に理屈では解明できない不思議な何かもそこにはあった。三輪山には、相変わらず月一で登っていた。この頃になると教祖気取りの若先生が、講を大きくしようと躍起になって勧誘を始め、いろんな人たちが集ってくるようになっていた。御利益信仰で来る人も多くなり、お金が欲しい、地位が欲しい、有名になりたい等々、気がつくとそんな人ばかりになっていた。中でもテレビプロデューサーの山口(仮名)さんは、お山に来ている人たちを使って映画を作ろうと、毎回山に登っては願をかけ、下山するとさっそく競輪場に駆け込むという困った人だった。ある声優の女の子は、有名企業の重役の人たちに取り入っては、スポンサーになってもらっていた。他にも、多くの人たちが、そこに集う地位のある人たちを利用しては、得になることを企み、自分を顧みるどころか、欲の固まりの集団と化していた。魑魅魍魎は人の心の中に住む、そんな言葉が実感できる集団になっていた。そんな人たちの中で、ひとりだけ気になる人がいた。僕と同い歳の子持ちの女性で、名前をユリちゃんと言った。彼女は不思議な人だった。お山に登ると決まって落ち着きがなくなり、そのうち透き通るような声で歌のようなものを口から奏で始める。それは歌というより音に近