真夜中の虹(page 204/280)[真夜中の虹]
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204なかなかできなかったのだ。焼きあがったばあちゃんの骨は思ったより小さかった。家人と僕は少しピンクがかった可愛い骨を箸で拾い骨壷に入れた。ばあちゃんの肉体が骨になった。ひとつひとつ式の段取りが消化さ....
204なかなかできなかったのだ。焼きあがったばあちゃんの骨は思ったより小さかった。家人と僕は少しピンクがかった可愛い骨を箸で拾い骨壷に入れた。ばあちゃんの肉体が骨になった。ひとつひとつ式の段取りが消化されていく…。それに伴い、ゆっくりと気持ちの方も整理されていった。初七日のお経も終わり、精進落としの席になった。ばあちゃんの娘婿にあたる叔父さんが、老人ホームでおばあちゃんが詠んだ句を一句読み上げた。「こいのぼりちまき作りがなつかしい」ははははは……そのまんまやないか。思わずツッコミを入れたくなるような句に皆がズッコケたが、葬儀の最後にふさわしい一句だった。葬儀も無事終わり外へ出ると、四月の青空が力一杯広がっていた。その二日後、隣の叔母さんがやってきた。手には小さなポチ袋がふたつ握られていた。「あのね、老人ホームのおばあちゃんの引き出しを整理していたら、これがふたつ出てきてね。何だろうと思って見てみたら、おたくの娘さんふたりに、高校の卒業祝いに用意していたみたいなのよ。だから形見と思ってふたりにあげてちょうだい」そう言ってポチ袋をふたつ渡された。中身を見ると五千円ずつ入っていた。収入のないばあちゃんが工面をした大切なお金。ばあちゃんに卒業の報告をしなかった娘たちは、涙を流しな