真夜中の虹(page 198/280)[真夜中の虹]
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概要:
198それ以来、ばあちゃんとは会っていない。だから僕がC型肝炎であることも知らない。もし知ったら、きっと言うに決まっている、また中島の家に不幸がと…。翌日も危篤状態は続いた。この日、四月十四日は長女の誕生....
198それ以来、ばあちゃんとは会っていない。だから僕がC型肝炎であることも知らない。もし知ったら、きっと言うに決まっている、また中島の家に不幸がと…。翌日も危篤状態は続いた。この日、四月十四日は長女の誕生日。長女を一緒に連れていこうと思ったが、大学に出かけていったあとだったので、偶然家にいた次女を連れて三宿の病院へ向かった。病室へ入ると、酸素マスクを装着し、かすかに息をするばあちゃんが仰向けに寝かされていた。ばあちゃんお疲れさま、いろいろ大変だったけど、これで楽になれるよ、よかったね…。まだ息のある身体を擦さすると、思ったより弾力があり、病気の僕の手よりよっぽど温かだった。小さな頃からよく触ったばあちゃんの身体。ばあちゃんには背中にイボがあり、僕はそれを「ビーッ!」と言って押すのが好きだった。だから最後の思い出に押そうかと思ったけど、ベッドにくっ付いたばあちゃんの背中に手を回すことはできなかった。しばらくすると、三重の名張に住む叔父夫婦(父の末の弟夫婦)、そして名古屋から兄がやってきた。僕は入れ代わりに家に戻った。三宿から家までは車で十五分。寒い雨の中を運転して帰ると、兄から電話が入った。いま死んだよ。そうか、死んだか…、一瞬心が空っぽになった。数時間後、隣の叔父の家にばあちゃんが戻ってきた。生きていたときは子供たちがよく遊び