真夜中の虹(page 197/280)[真夜中の虹]
このページは、電子ブック 「真夜中の虹」 内の 197ページ の概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると、今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
197となく、なんだかわけがわからない涙を流していた。このふたつの出来事は、ばあちゃんにとってとても悲しい思い出になってしまった。それ以降は、会うと姉や父の話ばかりして、しくしくと涙を流すことが多くなっ....
197となく、なんだかわけがわからない涙を流していた。このふたつの出来事は、ばあちゃんにとってとても悲しい思い出になってしまった。それ以降は、会うと姉や父の話ばかりして、しくしくと涙を流すことが多くなった。しばらくして、僕の子供が生まれた。生まれた子は、ばあちゃんにとって初の曾孫だった。その後、次女も生まれ、ふたりはよくばあちゃんの部屋に遊びに行ってはお菓子をもらっていた。ばあちゃんはとても嬉しそうだった。ひきかえに僕の方は、ばあちゃんに会うのが億劫になっていた。会えば必ず、両親の自殺は母が誘ったのだと、くどくど愚痴をこぼすのだ。ばあちゃんにとって、母は血の繋がらない他人かもしれないが、僕にとっては血の繋がった母。そんな愚痴を聞き流せるほど、こっちはまだ大人ではなかった。そうこうするうちに、ばあちゃんは三軒茶屋にある老人ホームに入ることになり、僕は離婚し、子供たちは千葉に引っ越した。そしてまったくと言っていいほど会わなくなった。最後に会ったのは、千葉から戻ってきた長女と次女が揃って東京の高校に入る年の春だった。長女、次女を連れて三茶の老人ホーム「フレンズホーム」に行った。しかし、このときもばあちゃんは僕に対し、あそこの家は幸せなのに、どうして中島の家は幸せじゃないんだ、と他所の家と自分の家を比較しては愚痴をこぼした。僕はばあちゃんが思っているほど不幸せだと思っていないよ…、そう心の中でつぶやき、会いに来たことを悔やんだ。