真夜中の虹(page 196/280)[真夜中の虹]
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196第三九話「大往生」申し訳ない。ここでちょっとこれまでの話を中断して、現在の話をさせて欲しい。二〇〇四年四月十三日(火)の夕方。外は冷たい雨が降っていた。夕食を食べていると、隣に住む叔母(父の弟の妻)が....
196第三九話「大往生」申し訳ない。ここでちょっとこれまでの話を中断して、現在の話をさせて欲しい。二〇〇四年四月十三日(火)の夕方。外は冷たい雨が降っていた。夕食を食べていると、隣に住む叔母(父の弟の妻)がやってきた。百二歳になる父方の祖母が意識不明の危篤だという。そうか、とうとうばあちゃん死んでしまうのかぁ……。結局、あんまり会いに行けなかったなぁ…。でも百二歳かぁ…、大往生だなぁ…。溜め息と共にそんな言葉が浮かんでくる。しかし、不思議に悲しくはなかった。僕はばあちゃんが好きだった。小さな頃は縁側でよくお喋りをしたし、一緒に下北沢のおせんべ屋まで散歩に出かけたりした。どこにでもある、ごく普通のばあちゃんと孫だった。ばあちゃんは七人の子供(男三人、女四人)を産み、東京オリンピックの年に夫(おじいちゃん)を亡くした。その後、僕の姉が病気になり、ばあちゃんは姉の付き添いとして三年間、病院で生活をすることになった。姉は、ばあちゃんにとって初孫。姉が死んだときは、ベッドの脇で大声をあげて泣いていた。ばあちゃんの泣き声を聞いたのは、そのときが最初で最後だった。それから十年後、ばあちゃんは、今度は息子を失った。僕の父だ。このときは声をあげるこ