真夜中の虹(page 193/280)[真夜中の虹]
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概要:
193はいつも神棚の中央に置かれ、三輪山の奥津磐座の下に何カ月も埋められた。山と講の御霊が入った、皆の代表というか象徴のような玉だった。今回の目的のひとつは、その水晶玉を天柱石の下に埋めて帰ることだった....
193はいつも神棚の中央に置かれ、三輪山の奥津磐座の下に何カ月も埋められた。山と講の御霊が入った、皆の代表というか象徴のような玉だった。今回の目的のひとつは、その水晶玉を天柱石の下に埋めて帰ることだった。一年間ここに寝かせ、三輪山とのエネルギーの交換を行う。そして来年になったら取り出して、再び三輪山に埋める。それを繰り返し、神たちの融和をはかるということだった。エネルギーの交換とか神たちの融和とか、よくわからない言葉に惑わされ、使命感という実にいかがわしい名目に皆が浮かれていた。大きな水晶玉はそれまでYさんという、皆が信頼をおいている女性が袋に入れ肌身離さず身につけ守っていた。しかし、ここに来て若先生はその水晶玉をいきなり若い女性のSさんに持たせた。まずい!若いSさんはYさんと違って、信仰心など欠片もない、ただ目立ちたいだけの人だ。そんな人に皆の大事な玉を渡しては駄目だ…。でもそのときは、若先生が決めたことに文句をつける勇気はなかった。天柱石の下に穴が掘られ、Sさんの手で袋から玉が取り出されようとしたそのとき、玉はSさんの手から滑り落ち、岩の上でゴン!と鈍い音をたてた。皆の顔に緊張が走った。誰かが慌てて拾い上げ、玉をかざしてみると、そこには大きな傷がついていた。Sさんは真っ赤になって顔を歪ませ、若先生はもの凄い形相で顔を引きつらせた。せっかく晴れの舞台をセットしてやったのにこのバカが…。このたった一瞬に見せた若先生の