真夜中の虹

真夜中の虹(page 185/280)[真夜中の虹]

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185そこの心地良さといったらなかった。空と陸の境目が取り払われ、雲が手の届きそうな位置にある。この先、人生が嫌になったらここに来て、この空と雲に話をしよう。そんな思いになれる場所だった。頂上には、ちょ....

185そこの心地良さといったらなかった。空と陸の境目が取り払われ、雲が手の届きそうな位置にある。この先、人生が嫌になったらここに来て、この空と雲に話をしよう。そんな思いになれる場所だった。頂上には、ちょうどヘリポートぐらいのポッカリ空いた場があり、そこに奥津磐座と呼ばれる大きな磐座群があった。磐座の中でもいちばん霊力の強い場所といわれ、かなり長い時間、そこで鎮魂の祈りをした。ここでも昨日の夜参りのように、霊が降りて喋り出す人がいたが、それでも昼間ということもあって、昨夜のような恐さはなく、のどかな雰囲気のまま鎮魂の祈りを終えることができた。さて、後は下りるだけ。寂しさを残しつつ、奥津磐座を後にした。このまま異界に心を漂わせたまま、心地良い気持ちを下界に持ち帰りたかった僕の思いとは反対に、帰りは現実に直面させられることになった。それまで、とてもいい雰囲気だった人たちが、自分の荷物を他人に押し付ける、移動電話を取り出す、我先にと先を急ぐ等々、下っていくにつれ元の我が儘な人間に戻っていった。そういう人たちを目の当たりにすると、どうもいけない。良くないとはわかっていても、人間嫌いで、ひねくれ者の自分が頭を擡もたげてくる。ああ、人間て奴は…と思ってしまい、すべてを放り出したくなる。下山しながら、そのことを若先生に告げたら、