真夜中の虹

真夜中の虹(page 183/280)[真夜中の虹]

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概要:
183だった。それでも行者さんが数人、お唱えをしながら瀧に打たれていた。そこからさらに十分ほど登っていくと、もうそこは別世界。空気がまるで違い、弥生時代にタイムスリップしたように、辺りには原生林が生い茂....

183だった。それでも行者さんが数人、お唱えをしながら瀧に打たれていた。そこからさらに十分ほど登っていくと、もうそこは別世界。空気がまるで違い、弥生時代にタイムスリップしたように、辺りには原生林が生い茂っている。鳥の声や草木のざわめき、すべてがこれまで耳にしたことのないクリアーな響きで毛穴から染み込み、心の奥まで届いた。ここはどこだろう…。氷川神社が二千年の自然なら、ここは万年の自然。もし自分が死んだら、ここの土に埋めて欲しいと思った。お山にいるとすべてがありのままになる。普段何をしていようと、何を思おうと、ここではまったく関係ない。誰もが大自然の恵みの中の一部で、仕事も性別も上下関係も超えた、素のままの状態でそこに居ることができた。このときは、一流企業の社長さんから不良中学生まで、いろんな人が一緒に登っていたが、誰かが特別扱いされるわけでもなく、卑屈になるでもなく、普段ではありえない平等な人間関係がそこにあった。古代の心地よい風に吹かれながら登っていくと、小さな谷に出た。「ウォォォォォォォォォー」突然、ひとりのおじいさんが、谷に向かって大きな声をあげた。気でも触れたのかと思ったが、若先生に聞くと聖霊と会話をしているのだという。