真夜中の虹(page 171/280)[真夜中の虹]
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171第三三話「神木」初めて飲む漢方は、意外に不味くはなかった。これで精神の崩壊は防げるかもしれない、ひょっとしたら僕の心の病は治るかもしれない、そういった思いが漢方薬の苦さを緩和し....
171第三三話「神木」初めて飲む漢方は、意外に不味くはなかった。これで精神の崩壊は防げるかもしれない、ひょっとしたら僕の心の病は治るかもしれない、そういった思いが漢方薬の苦さを緩和してくれたのだろうか、とにかく僕は藁をもすがる思いで薬を一日三回きちんと飲み、多少の波はあるものの、なんとか穏やかな精神状態を保てる生活を送れるようにまで快復した。ある日のことだった。月一回の漢方相談に行くと、いつもの席におじいさん先生がいない。あれ、どうしたんだろう、休みなのかなぁ…。見ると、いつものおじいさん先生の席に、見慣れない若い(と言っても見た目四十代後半)先生が座っていた。おじいさん先生の面影があったので、先生のお子さんかなぁ…、よく見ると俳優の渥美清に似ているなぁ…、おじいさん先生はいないみたいだから今日は帰ろうかなぁ…。そのとき、若い先生と目が合った。渥美清似の瞳でジッと睨にらまれ。「心配ないから、ちゃんと診てあげますから、待ってなさい」こちらの心を見透かすように静かに、そしてある強さを持って言われた。