真夜中の虹

真夜中の虹(page 168/280)[真夜中の虹]

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168三十分ほど待って中に入った。薬局内は狭く、薬が陳列してあるケースが店内の大半を占め、残りのスペースに長椅子がふたつ並び、そこも多くの人が肩を寄せ合い順番を待っている。その奥で、メ....

168三十分ほど待って中に入った。薬局内は狭く、薬が陳列してあるケースが店内の大半を占め、残りのスペースに長椅子がふたつ並び、そこも多くの人が肩を寄せ合い順番を待っている。その奥で、メガネをかけた人の良さそうなおじいさんがひとり、椅子に腰かけ患者の手首を握りしめ、何やら呟いていた。どうやらその人が先生のようだ。なんだか面白そうな人だなあ…。そのおじいさん先生の穏やかな佇たたずまいに、僕の心は癒され、久しぶりに落ち着いた気持ちになれた。順番が回ってきた。吸い寄せられるように、おじいさん先生の前に座った。「ちょっと脈を見せて」その人は僕の右手首を右手でひょいと掴つかみ、中指と人差し指を手首の血管にあてる。「どうされました」「自分がわからなくなりました」「うむ」脈を診ながらの診察。その人は会話をしながらも、全神経を脈に集中させていた。冷たい僕の細い血管に、ときには弱く、ときには強く、指先を優しくあてる。先生の暖かい指先が血管に触れるだけで心地が良い。右手が終わり、左手に移り、再び集中。そして、目を小さくカッ