真夜中の虹

真夜中の虹(page 164/280)[真夜中の虹]

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164喋る方も喋る方だが、聞く方も聞く方だ。どうやらふたりとも似た者同士のようだ。話しているうちにわかったことがあった。彼女は以前、僕が劇団にいた頃の芝居を偶然観ていて、僕のこともはっきり覚えているとい....

164喋る方も喋る方だが、聞く方も聞く方だ。どうやらふたりとも似た者同士のようだ。話しているうちにわかったことがあった。彼女は以前、僕が劇団にいた頃の芝居を偶然観ていて、僕のこともはっきり覚えているという。やっぱりどこかで縁があったのだ。そう思うと、こうやって話をしているのも、昔から決められていたことのように思えてくるから不思議だ。それから数週間経ったある日、なんとなく彼女に電話をかけたら、彼女の同居人が電話に出た。彼は少し低いトーンで言った。「彼女は精神に異常をきたし、ある大学病院の精神神経科に入院しています。良かったらお見舞いに行ってあげてくれませんか」次の日、さっそく彼女の入院する病院に向かった。三鷹の駅で降り、そこからタクシーに乗って、病院へ行く途中だった。心臓がまたバクバクしてきた。精神のおかしい人間が、精神科に入院している人を見舞う…。これは、とてもおかしい…。しかし今更そんなことを考えても始まらない。病院にたどり着き、病室を探し、ノックをした。返事がないのでソッとドアを開け中に入った。そこにいた彼女は、あきらかに狂っていた。眼はあらぬ方向を見つめ、こちらの問いかけにもぼんやりとした返事を返すだけで、ジッとしていた。しばらくして回診の時間になり、僕は廊下に出された。部屋の外で待っていると、医者の声に被せて彼女の罵声が飛んできた。何か